2020年6月13日土曜日

ブリューゲルの「死の勝利」

Bruegel

全人口の半分近くが死んだペストの恐怖から生まれたといわれる「死の舞踏」という絵画がたくさん描かれたが、ブリューゲルはさらに恐怖感のすごい「死の勝利」を描いた。骸骨を猛威を振るうペストに置き換えて見ると当時の人たちの恐怖感が分かる。

             骸骨に制圧され遠くに火が上がり、人間はわずかに抵抗しているが無力
骸骨に様々な方法で処刑される人間たち
骸骨軍団が棺桶を盾に進軍してくる。死んだ人間の頭蓋骨が荷馬車で運ばれている

2020年6月11日木曜日

「死の舞踏」ペストの恐怖から生まれた「メメント・モリ」の絵画

Memento Mori

1 4 世紀にペストが猛威を振るい、人口の半分近くが死んだことが、人々の死生感に大きな影響を与えた。「人は誰もが死すべき運命にあることを自覚して生きよ」という意味の「メメント・モリ」という哲学が生まれた。そしてそれをテーマにした絵画が生まれたが、必ず死の象徴としての骸骨が描かれた。



骸骨が人間を死へ導いていく「死の舞踏」。王侯貴族や聖職者も身分に関係なくいずれは死ぬという図で、一人一人に骸骨が取り付いてダンスをしている。

ペストの恐怖から、人々が集団ヒステリーを起こしている。楽器を奏でながら半狂乱で「死の舞踏」を踊り続けている。それを骸骨が導いてゆき、墓穴へ放り込んでいる。

ブリューゲルの「死の勝利」という恐怖の絵。死がすべての人間を打ち倒す様子を描いている。人々は黒装束の骸骨に襲われ、様々な残虐な方法で処刑されている。

「ヴァニタス」という静物画のジャンルが 1 7 世紀に流行した。ヴァニタスとは「空虚」という意味で、人生の虚しさと、人間が死ぬべき運命であることを示した寓意画。頭蓋骨が必ず描かれた。
「死の島」で有名なベックリンの「ヴァイオリンを弾く死者のいる自画像」は、近代版「死の舞踏」だろう。

背中に取り付いた骸骨がニタリと笑いながら音楽を奏でている。ベックリンはチフスにかかり九死に一生を得たが、家族を失った。

ベックリンは疫病と戦争によって文明が滅びるだろうというペシミスティックな終末論的世界観を持っていた。やがて実際に第一次世界大戦とスペイン風邪で何千万の人が死ぬことになる。この絵はその予言かもしれない。

2020年6月9日火曜日

アメリカの出来事と映画「国民の創生」

The Birth of A Nation

白人警官が黒人を殺す事件がまた起きた。しかし警官本人は社会正義を守るという使命感からやっている。そして警官を心情的に応援する人たち(トランプ大統領が典型)がたくさんいる。そのなぜ?が分かる映画がある。

サイレント時代( 1 9 1 5 年)の有名な映画「国民の創生」は極端な人種差別映画だった。このポスターから分かるように、黒人を虐殺する白人至上主義者たちを「正義の味方」として描いている。

南北戦争で分断された北部民と南部民がひとつになって「アメリカ国民」が生まれるまでの歴史を描いている。南北戦争後に市民権を得た黒人を「民主主義を守る」ために白人が集団リンチする。映画はそれを美化している。黒人を排除することで、初めて一つの国民として団結できたというわけで、最初から黒人は「アメリカ国民」には含まれていなかった。

この映画は圧倒的な支持を得て大ヒットした。映画から、なぜ黒人を殺すのが正義になり、なぜそれが共感されるのかを理解することができる。そして今度のような事件からも、このような意識が今も人々の心の奥底で生き続けていることが分かる。

映画史上に残る名作とされるが、史上最悪とも言われるこの映画、一応は見ておこうというには、こちら→   https://www.youtube.com/watch?v=2Qcf7AvTuvM

2020年6月7日日曜日

1 7 世紀の医療用マスク

Plague Doctor

コロナのおかげで、この絵を最近見かけるようになった。ペスト(黒死病)の流行にたびたび見舞われたヨーロッパでは、ペストの治療を専門にする医者がいたそうで、その姿を描いている。

マスクは鳥の形をしていて、くちばし部分は空気浄化用の香料が入ったフィルターになっている。目の部分にはガラスがはめられている。マスクは顔全体を覆っているから、フェースシールドにもなっている。全身を覆う防護ガウンはワックスが塗られていて通気を遮断する。手に持っている棒は、患者に触れずに治療するためのもの。ウィルスの存在など知らなかった当時でも、現在と変わらない感染防止策をとっていた。それでも医師たちは感染して、死ぬ確率が高かったらしい。

この姿に似た鳥の怪物が、ヒエロニムス・ボスの絵に出てくる。(「幻想芸術」という本の表紙になっている。)地獄で人間を襲う怪物の一匹として描かれている。医学未発達の時代、魔除けのおまじない的な意味で、このような怪物としての鳥の姿を借りていたのだろう。医者といえども「医術」より「魔術」頼りだったようだ。

2020年6月5日金曜日

”死んだ都市”の絵(その8)ギーガー

Giger

有機的・生物的な高層ビルと、無機的・機械的な人間という、本来とは逆転した姿を描いている。そしてそれらが一つに合体している。A I やロボットの発達した都市が人間的な機能を持ち、逆に人間は都市というシステムの部品として組み込まれている。これからの都市文明のありようを暗示している。


2020年6月3日水曜日

”死んだ都市”の絵(その7)イヴ・タンギー

Yves Tanguy

シュール・リアリズムのイヴ・タンギーの代表作「孤の増殖」。都市を俯瞰しているが、動物か植物か鉱物か、それともウィルスか、何か分からないものが「増殖」して、地面を埋め尽くしている。人間的な生活のできる場所でなくなった現代都市のメタファーなのだろう。


2020年6月1日月曜日

”死んだ都市”の絵(その6)ベクシンスキー

Beksinski

ナチスドイツによるホロコーストを経験したポーランド人のベクシンスキーは、戦争による人間の死を、破壊された都市で表現した。市街戦で蜂の巣のようになった建物は、ただの岩の塊になっている。文明的なものが破壊しつくされた「終わりの世界」を描いている。