2025年6月16日月曜日

アルバート・ビアスタットの絵画と西部劇映画

 Albert Bierstadt &「Once Upon a Time in the West」

鉄道が登場する西部劇映画はとても多い。西武劇の時代は19 世紀の、西部開拓のための鉄道が西へ西へと伸びていった時代だったからだ。典型的なのが「ワンス・アポンナ・タイム・イン・ザ・ウェスト」だ。オープニングで、列車が去ると、そこに列車を降りた主人公のガンマンが立っているというシーンが有名だ。


ストーリーは、鉄道会社が鉄道建設のために、個人の土地を奪おうとする利権争いがテーマになっている。鉄道建設の現場のシーンも出てくる。




話は飛ぶが、19 世紀にアルバート・ビアスタットというアメリカの画家がいた。未開拓のアメリカの自然を描いた「ハドソン・リバー派」のひとりだが、主に西部の大自然を描いた。この「シエラ・ネバダ山脈」は有名で、壮大な自然を幻想的に描いている。ビアスタットは、西部各地を旅してスケッチをして、それらを合成して、実際にはない理想的な風景を作り上げた。巨大なキャンバスに非常に精密に描いた写実絵画で、「アメリカン・リアリズム」の源流のひとりといわれる。


このことについて、「アメリカン・リアリズムの系譜」(小林剛)のなかで面白い指摘がされている。

「19 世紀のアメリカ人にとっての自然は、手付かずの荒野としての自然といったイメージであった。そのイメージを描いたビアスタットのような風景画に魅せられたアメリカ人たちは、大陸横断鉄道を使って、自然を実際に「見る」ツアーが盛んに行われた。だから当時の風景画や風景写真で、自然の風景のなかに鉄道の線路がまっすぐに伸びていくという構図が頻繁にあった。ところがその「見る」欲望は、やがて鉄道を使ってその土地を開拓して「所有」する欲望になっていった。」

まさに西部劇「ワンス・アポンナ・タイム・イン・ザ・ウェスト」と、ビアスタットの絵画が結びつく話で面白い。


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