「The Book of Lost Things」
ジョン・コナリーの「失われたものたちの本」が、宮崎駿のアニメ「君たちはどう生きるか」に大きな影響を与えたという。本の帯に「ぼくをしあわせにしてくれた本です。出会えて本当に良かったと思ってます。」という宮崎駿の推薦文がある。そしてアニメの物語構成が、この本とそっくり同じになっている。ドイツ軍の空襲が続く第二次世界大戦さなかのロンドン、12 歳の少年ディヴィッドは母親を亡くし、孤独に苛まれる。やがて現れた継母になじめず、部屋に引きこもり、大好きな本の世界に没頭する・・・という具合に「君たちはどう生きるか」のアニメと全く同じ状況設定から始まる。
やがて本の中の不思議な王国の幻を見はじめる。そして「ディヴィッド、私は死んでいないの。ここに来て、私を助けて。」という死んだ母の声に導かれて、王国に迷い込んでしまう。迷い込んだ異界は、おとぎ話の登場人物や怪物たちが蠢く、美しくも残酷な世界だった。
「君たちはどう生きるか」と共通点が多いが、違いもたくさんある。その一つが異界の奇怪さが強烈なことだ。例えば、赤ずきんが狼を誘惑して交わり、人と狼のあいの子の人狼を産み、その人狼が人間を食い殺す・・・ディヴィッドは、継母を嫌悪していたし、継母と父との間に生まれた赤ん坊を憎んでいたが、そのことがこの赤ずきんのイメージに投影されている。推測だが、宮崎駿は本当はこの本どうりにアニメを作りたかったが、アニメは子供も見るから、奇怪さを弱めたのかもしれない。「君たちはどう生きるか」を観た人、これから観る人、どちらにもおすすめの本だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿