2023年1月9日月曜日

ゴッホの「ひまわり」が訴えられた

 Van Gogh's Sunflower

新年そうそうに面白いニュースが報じられていた。SONPO 美術館が所有するゴッホの「ひまわり」の返還要求をする訴訟がアメリカで起こされたという。戦前のナチスによって強奪された作品だとして、元所有者の遺族が返還を求めている。しかしSONPO 側は、公開オークションで落札したものだから正当な所有権があると主張している。

新宿の SONPO 美術館の入り口を入ったすぐの目立つ所に「ひまわり」が特別な感じで常設展示されている。同館の超目玉作品だからこの裁判は難航するだろう。

これで真っ先に思い出すのは、映画「黄金のアデーレ  名画の帰還」だ。クリムトの名作「黄金のアデーレ」は、ユダヤ人の富豪が自分の娘をモデルにして描かせた肖像画だが、ナチスに強奪され、戦後はオーストリア政府の所有になっている。モデルの女性の姪は、ナチスの収容所送りから逃げてアメリカに亡命したのだが、今では 8 2 歳になる。彼女が家族の所有物だとして返還の訴訟を起こす。難航する裁判の末にやっと勝つのだが、帰還した絵を美術館に寄贈してしまう・・・という興味深い映画だ。これは実話にもとづく映画で、ナチスに奪われた絵画を取り戻す訴訟は現在もたくさん続いていて、それ専門の弁護士もいるという。今回の「ひまわり」もそれだろう。

もうひとつは、松方コレクションを思い出す。絵はすべて、金を払って買った個人の所有物だ。しかしフランスで保管していたため、終戦時にフランス政府に戦利品として奪われてしまう。絵画の強奪はナチスの専売特許ではなく、”芸術大国” のフランスも同じだ。日本政府は返還交渉をしたが、超重要な作品は返えってこなかった。その一つがゴッホの「ファンゴッホの寝室」だ。だから、松方コレクションを展示している国立西洋美術館にこの絵は無く、オルセー美術館にある。また返ってきた絵も「返還」ではなく、「貸与」だ。「返還」にすれば「強奪」であることを認めてしまうことになるので。あくまで所有権のあるフランスが日本に貸してあげているという形にしている。


0 件のコメント:

コメントを投稿