2023年1月24日火曜日

映画「ヒトラーのための虐殺会議」

The Wannsee Conference

「ヴァンゼー会議」は、ユダヤ人絶滅の実行計画を決定した会議として歴史上悪名が高い。この映画は、当時の議事録をもとに会議を忠実に再現している。関係省庁の次官級の官僚 15 人が出席して、ユダヤ人の絶滅方法が検討される。


観ていてあることに気付いた。議長の横のコーナーに女性が速記録を取っているのだが、その隣に座っている男は高官ではなく、議事録作成役のただの担当者で、議論には参加しない。この男が議長から「アイヒマン」と呼ばれている。もしやと思って後で調べてみたら、あの有名な「アイヒマン」その人だった。アイヒマンは下っ端役人としては一人だけヴァンゼー会議に同席したと書かれているが、映画はその史実どうりに描いている。

彼は自分から意見は言わないが、議長から促されると、議論に必要なデータを説明する。各地区のユダヤ人の人数、収容所へ移送する鉄道のキャパシティ、殺すにはガスを使うのが効率的、など的確な情報をスラスラと説明する、いかにも有能な役人といった感じだ。後に彼は、ユダヤ人の移送全体を取り仕切る最高責任者になって、この会議で決定した 500 万人のユダヤ人虐殺を忠実に実行する。そのため戦後の戦犯裁判で死刑になる。

この裁判を題材にした映画はいくつか作られたが、最も重要な映画は「ハンナ・アーレント」だろう。この裁判で、アイヒマンは「自分は命令に従って、役人としての仕事を忠実に果たしただけだ。」として徹底的に無罪を主張し続けたが、それを傍聴していた哲学者のハンナ・アーレントはある結論に達する。それが有名な「悪の凡庸さ」だ。アイヒマンは、殺人鬼のような悪人ではなく、思考を停止して自分の仕事を淡々とこなしただけの陳腐で凡庸な人物だったという意味だ。


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