「A City of Sadness」
「非情城市」は 1 9 8 9 年にベネチア映画祭でグランプリを受賞した台湾映画の名作だ。昨今、台湾情勢がよく報じられるが、その問題のおおもとにある歴史的背景を理解するのに、この映画はとても参考になる。台湾に行った時、「台北二二八記念館」を見学したが、展示内容が衝撃的だった。昭和 2 0 年の日本敗戦で台湾統治が終わると同時に、中国から逃げてきた国民党政権の中国人による統治が始まる。その時起きた虐殺事件が「二二八事件」だった。この映画は、その事件を庶民の目を通して描いている。
中国人の兵士が台湾人女性に暴行を加えたことへの抗議デモが台湾全土に広がる。国民党政権は、抗議する人間を捕らえて処刑し、犠牲者は3万人ちかくにものぼった。彼らは主に日本語で高等教育を受けた人たちで、政府は日本の影響を台湾から一掃することを狙っていた。それ以来、国民党独裁政権の間、この事件は封印されていたが、1 9 8 7 年頃に民主化が始まると、この事件の全容が明らかにされてくる。それでこの映画も誕生した。
映画は、主人公の青年を通じて、終戦からの激しく揺れ動いた台湾社会を描いている。戦争が終わってもまだ台湾に「日本」が残っていた時代で、台湾人同士が日本語で会話していたり、日本の歌が流れていたりする。抗議デモは拡大して、民衆の反政府ゲリラ化するが、街に紛れ込んでいる中国人を見つけるために日本語で話しかける。日本語で答えられなければ中国人だ。
逮捕された若者たちは、当時の日本の流行歌「幌馬車の唄」を歌いながら処刑される。日本が去って、自分たちの新しい理想の国が作れると思っていたのに、日本の歌を歌いながら死んでいく「台湾」の悲しみが描かれている。
写真家の主人公はセルフタイマーを使って家族の写真を撮るが、その3日後に逮捕される。
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