2018年11月26日月曜日

ピサロの坂道の絵

Pissarro's  perspective

印象派のピサロの絵。雪道で二人の女性とすれ違うとき、男は車道へはみ出て道を譲っている。

ピサロは道の絵が多く、ほとんどが道を歩きながら見た風景を描いている。だから一点透視の構図が多いが、この場合は消失点に向かって一直線の道ではない。カーブしながら上り下りの起伏がある変化に富んだ道のようだ。遠近法的に面白ろそうなのでどんな道か調べてみた。

1 右手前の家から地平線( H.L.)の位置が推定できる。
2 道路は6つの面に分割でき、それぞれの消失点の位置を特定できる。
3 2番と3番の消失点( VP 2, VP 3 )は地平線上にあるので、ここは水平な道。
4 男が立っている一番手前の面は、消失点が地平線より下にあるので、やや下り坂。
5 4番目から上り坂がだんだんきつくなっていき、最後の6番目は急坂になる。


2018年11月24日土曜日

東山魁夷の「道」

Higashiyama Kaei

東山魁夷は終生市川市に在住していたので、現在その地に「市川市東山魁夷記念館」という美術館がある。以前同じ市内に住んでいたので、時々ここへ行った。今やっている東山魁夷展(国立進美術館)の看板作品が「道」だが、記念館ではその習作(左)があった。本作(右)と色が少し違うが、構図はほとんど同じ。


一直線の道だけを描いた単純この上ない絵。道は途中で切れていて、遠くまで見えていない。道を延長すると、消失点は彼方の山の稜線あたりになるので、これは上り坂なのだろう。一点透視の絵は消失点へ向かって見る人の視線を吸い寄せる求心力があるので、この道をどこまでも歩いて行きたくなる。そして習作と比べて気がついたが、本作の方は、道の先端が明るくなっていて、求心力をさらに強めている。

2018年11月22日木曜日

鎌倉建物散歩 明治の洋館(旧諸戸邸)

A retro residense in Kamakura

江ノ電の由比ヶ浜駅近くにあるこの洋風建築は明治時代に実業家の別邸だったもの。国の有形文化財になっているが、今は使われておらず無人になっている。小ぶりなのは、もともと両側にあった部分が取り壊されて、この中央部分だけが残っているからだという。正統的な古典主義の意匠で、バルコニーのコーナーが微妙なカーブでふくれているあたりなど、なかなかエレガント。

2018年11月20日火曜日

歪んだ写真 

Distortion of photo

幅1mくらいの大きい絵を画面いっぱいに撮ると直線が湾曲する。これでは使えない。

しかしこれは遠近法的な理屈には合っている。四角の周辺は若干だが中央より距離が遠いから長さが縮み、直線が湾曲する。

目では歪んで見えないのは、目の網膜が凹面状に湾曲しているためで、それに対してカメラは平面上に像を映すので周辺が歪む。写真で歪みを減らすには離れて望遠レンズで撮るか、画面中央に小さく撮り、後で周囲をトリミングするしかない。

絵画の遠近法もカメラと同じく平面に映った像を描く方式だから、遠近法が正しいほど周辺に歪みが出る。カメラ・オブスクラを使って写真と同じ正確さで描いたフェルメールなどもそうだ。

2018年11月18日日曜日

アイ・レベル(続き)

Eye lebel

レイモンド・リーチ「赤いドレスの少女」

たまたま見つけたこの絵だが遠近法的に面白い。5人の人がいて、立っていたり座っていたり、階段の上にいたり途中にいたり、とバラバラで、彼らを見上げたり見下ろしたりしている。だが一人だけそうでない人がいる。一番左の青シャツの男で、画家は彼だけを水平な視線で見ている。

遠近法の原理から、見ている人(画家)の目の高さ(アイ・レベル)は地平線上にあるわけだが、青シャツの男の顔も遠くの地平線と一致しているから、青シャツと画家は目線が同じ高さにいることになる。そしてこの画家は青シャツと同じく、階段の一番上に座って描いていることが分かる。

2018年11月16日金曜日

鎌倉建物散歩 旧・華頂宮邸

A retro residence in Kamakura

鎌倉には実業家や文人など有名人の邸宅や別荘だった建物が数多く残っているが、これは鎌倉3大洋館の一つ。すぐ近くにある観光スポットは人で賑わっているが、ここだけは別世界のように静まりかえっている。

華族の華頂宮家の邸宅だった建物で、1929 年(昭和2年)築。イギリスの民家を模した「テューダー・リヴァイバル」という様式だそうだが、端正な建物だ。背後には整然としたフランス式庭園があり、幾何学的な模様の芝生が広がっている。




2018年11月14日水曜日

何階から撮った写真? アイ・レベルとカイユボット

Eye lebel

こんなクイズを出したことがある。「この写真はあるビルから撮影したものだが、カメラマンは何階から撮った?」 中には「そんなこと本人に聞かなきゃ分からないだろう ! 」という人もいた(笑)が、答えはもちろん「3階」。窓の線が水平になっているのが3階で、その線は遠くの地平線とも一致している。見ている人(撮っている人)の目の高さ(アイ・レベル)は地平線上にあるという遠近法の基本の問題だった。

印象派のカイユボットのこの絵はその関係がズバリ描かれている。向かいのビルの3階と4階の境の線が水平になっていて、その線上に見ている人の目の位置がぴったり合っている。地平線は見えていないが、それもこの位置にあるはずだ。

カイユボットは遠近法に忠実だったようで、他の絵からもそれがうかがえる。下左の絵は地平線がシルクハットの男の目を通っていて、他の人たちも遠いので小さく描かれてはいるが目の位置は全員そろって地平線上に乗っている。
しかしそれは全員が道路の上に立っているからで、しゃがんだり子供だったりすれば、地平線とはズレた位置にくる。下右の絵は、道路に立っている人の目は正確に地平線上にある(消失点がすぐ横にある)が、脚立に乗っている人は大きくズレていて、そのことが分かりやすい。