2017年9月6日水曜日

「 RED ヒトラーのデザイン」

" RED,  Hitler's  Design "

「RED」という面白い本が出た。(著者:松田行正)
ナチスもの映画で必ず出てくるハーケンクロイツの垂れ幕を見ると内心ではかっこいいデザインだといつも思う。ヒトラーは絵画や建築の好みが時代錯誤的でバウハウスも弾圧した。それなのになぜこれはモダンなデザインなのか、とつねづね思っていたのだが、この本でドンピシャリ同じことを言ってくれている。そしてそのわけを豊富な資料をもとに読み解いている。

内容は
1  ファッション (ナチスデザインのファッション性や官能性)
2  デザイン (プロパガンダなどのイメージ戦略)
3  グラフィック (ポスター・写真・ロゴなど)
4  イミテーション (敬礼や制服などでの古い文化の引用)
5  ハーケンクロイツ (マーク・旗・バナーなどのシンボル)
6  ライン (軍用機や建築などでのナチス造形の特徴)

要するにこれは政治を視覚化した CI デザインだ。そしてヒトラーは腕のいいアート・ディレクターということだ。

2017年9月3日日曜日

建築家のドローイング

"100 Years of Architectural Drawing"

「死ぬまでに見たい名建築家のドローイング  300」という本をたまたま図書館で見つけたが結構面白い。100 年前から現在までの様々な時代・建築家の絵を見ることができる。

シドニーのオペラハウスのコンペで 200 点以上の中から選ばれたデンマークの無名の建築家のスケッチはごく簡単なものだったことは有名な話し。この本では具体化に進んだ段階のスケッチが載っているがやはり簡単な絵だ。しかし球面をカットした形を提示したこのスケッチのおかげで難航していた構造設計が一気に進んだという。

その他の例を。左は20 世紀初めのベルツィッヒの劇場のスケッチで、激しい感情をぶつけたようでいかにも表現主義建築家らしい。右は 1970 年代のポストモダンのグレイブスで、子供の積み木のような建物を色鉛筆で素朴に子供っぽく描いている。これらを見ると建築自体の時代性がドローイングの表現方法にも反映しているのが面白い。


2017年8月31日木曜日

アーチの美しい建築 横浜指路教会

Yokohama Shiloh Church

明治生まれのプロテスタントの教会。オリジナルはレンガ造りだったそうだが関東大震災で崩れて、大正 15 年にこの形に建て直されたという。ゴシック様式の建物で、各所に尖頭アーチのテーマが使われている。

正面玄関上部は尖頭アーチが何層も重ねられて奥行きを作っている。ゴシック教会の代表といえばパリのノートルダム大聖堂だが、それとほぼ同じ重厚な造りだ。

礼拝堂は祭壇や装飾がなく、十字架さえもない簡素さ。そのためアーチの美しさが際立っている。見学した時、他に誰もいなかったがパイプオルガンが演奏されていた。その音はこの天井の高い空間によく響き会っていた。

2017年8月27日日曜日

横浜 馬車道の「牛馬飲水」

Bashamichi Street, Yokohama

牛馬が陸上交通の手段だった明治時代に「牛馬飲水」という設備があった。牛馬用のガソリンスタンドだ。名前どおり明治初期すでに馬車が多かった「馬車道」に今もひとつ残っている。

また、馬車交通のために道路の整備もされて、馬車道はガス灯や街路樹などの発祥の地だった。ガス灯は当時のロンドンをそのまま模したものだそうだ。ということで馬車道では、標識、ベンチ、敷石などあちこちで馬がシンボルマークとして使われている。





2017年8月24日木曜日

映画「少女ファニーと運命の旅」

Movie   "La Voyage de Fanny"

毎年8月になると戦争映画がたくさん来る。しかし戦後何十年もたったからだろうか、もうドンパチだらけの単純な戦争ヒーローものは少なくなった。(「ハクソー・リッジ」あたりはその名残りか) 今回は「少女ファニーと運命の旅」と「ヒトラーへの 285 枚の葉書」を観たが、どちらも秀作だった。「少女ファニー 〜」を観て、戦争の犠牲になった子供たちを題材にした戦争映画を思い出してリストアップしてみた。


特にこの2作は、戦争の恐ろしさと残酷さをまざまざと見せつけるショッキングなすごい映画。

「サラの鍵」 
      小さな女の子の無邪気な思いやりが・・
「ソフィーの選択」 
   子供を "選択" させられた母親。むごすぎる。


そのほかの秀作
 「ライフイズビューティフル」  「悪童日記」
 「縞模様のパジャマの少年」  「やさしい本泥棒」
 「ふたつの名前を持つ少年」  「さよならアドルフ」      
 「黄色い星の子供たち」

そもそもこの名作もその先駆けだろう
 「禁じられた遊び」

2017年8月21日月曜日

古典建築 in 横濱「盾飾り」

Classical architecture in Yokohama

横浜には明治から戦前期にかけて建てられた古典様式の建築が残っている。普段通りすぎているそんな建物を改めてディテールだけに注目しながら歩いてみた。なかでも玄関の上に設置された装飾レリーフ「盾飾り」が面白い。建物のシンボルあるいは守護神のようなものらしい。

BunkaArt 1929
  (旧第一銀行横浜支店)
堂々としたローマ風建築。ふくろうモチーフの盾飾りがとても美しい。
横浜第二合同庁舎 
  (旧生糸検査所)
輸出生糸の検査所だったので盾飾りは成虫の蚕。胸に旭日旗のついた強そうな蚕なのは築が1926年という時代の反映か。
神奈川歴史博物館
  (旧横浜正金銀行本店)
明治の壮大なバロック様式建築。アーチのキーストーンになっている盾飾りは名前どおり盾の形で迫力がある。
東京芸術大学
  (旧富士銀行横浜支店)
芸大の映画専攻の校舎になっている小ぶりな建物で、盾飾りは優しい植物模様。

2017年8月18日金曜日

絵の中のインテリア(5)「片隅」

Interior in paintings (5)  "Corner"

アンドリュー・ワイエスが親しかった隣家の家族が亡くなった後にその家で描いた。掃除道具は使っていたままの姿だし、色のはげたドアについた犬の引っ掻き傷もそのまま。ワイエスは、その人たちがまだそこに生きているかのように感じながら描いたという。

家の片隅のありふれた物の中に人の生活の痕跡を見つけて描いた絵にやさしいまなざしを感じる。

暴風雨になった時、玄関に濡れたコートが掛かっていた。出かけていた妻が帰ってきたらしい。絵の中にはいなくても彼女はそこにいる・・ と愛妻家のワイエスは書いている。