2025年9月18日木曜日

ドキュメンタリー「やがて悲しき奇跡かな」

The period of high economic growth

「昭和 100 年」の企画で、NHK の「映像の世紀  昭和 100 年特集」のドキュメンタリー「高度成長  やがて悲しき奇跡かな」(9 / 8 放映)が 面白かった。戦後10 年で奇跡的な経済復興を遂げた日本が、空前の好景気になり、高度経済成長時代に突入した。番組で当時の映像が次々と映し出されると、あの時代にどっぷり浸かっていた人間にとっては、身につまされる思いがする。


当時よくあった職場での朝礼風景で、鉢巻をして「ガンバロー」と気合を入れている。後ろの横断幕には、「男なら、売って、売って、売れまくれ!」とある。当時「モーレツ社員」とか「企業戦士」とかいう言葉が流行ったように、サラリーマンはがむしゃらに働いた。経済成長率は毎年 10 % を超えていたので、給料も毎年 10 % 上がるという今では考えられない時代だった。まだ銀行振り込みはなく、現金支給だったから、ボーナスは札束の入った封筒が立つくらいぶ厚かった。明日は今日より必ず良くなると信じることができた時代で、人々の気持ちは明かるかった。


人口増にともなう住宅不足対策で、郊外に団地やニュータウンが続々と生まれた。高い応募倍率だが、運よく抽選に当たれば、水洗トイレのある近代的な生活ができた。そして「三種の神器」と呼ばれる家電製品が飛ぶように売れた。それとひきかえに、都心までの通勤時間は2時間はざらで、電車は乗車率 300 % の通勤地獄だった。駅には”押し屋”と呼ばれる客の押し込みが専門の駅員がいたのが今では信じられない。夜中までの残業が当たり前で、労働基準法の規制を超えると、超過分はタダ働きになるのが普通のことだった。そして深夜にまた2時間かけてヘトヘトになりながら帰宅する。


高度経済成長は公害問題を引き起こした。工場排水で汚染された海や川の水が深刻な健康被害をもたらした。また自家用車の普及で、排気ガスによる大気汚染がひどくなった。この映像はあの時代を象徴している。手前の渋滞した高速道路と、背後の煙を出す工場に挟まれて、どんよりした空気に包まれて、住宅が並んでいる。そして環境問題とオイルショックで、イケイケドンドンの高度成長時代は、1970 年代中頃までで終わりを告げる。そして虚しかったバブル経済時代を経て、現在は「失われた 30 年」が続いている。番組タイトルどうりの「やがて悲しき」だ。


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