「Irishman」
「アイリッシュマン」(2019 NETFLIX)は、スコセッシ監督の傑作のひとつだと思う。ロバート・デ・ニーロや、アル・パチーノなどが出演する3時間半に及ぶ大作だ。1950 年代アメリカで、マフィアが暗躍していた時代の実話に基づいている。労働組合指導者の座をめぐる権力闘争と、その裏でうごめくマフィアの犯罪組織を描いている。主人公はその裏社会で殺し屋として頭角をあらわしていく。
題名のとうり、主人公の殺し屋はアイルランド系移民だ。マフィアといえば、映画「ゴッドファーザー」のように、イタリア系移民が有名だが、それと並ぶくらいアイルランド系移民が大勢力を誇っていたという。
政治学が専門の村田晃嗣氏によれば、歴史上、多くのアイルランド人が新天地アメリカにやってきて、20 世紀までの総数は 700 万人にものぼるという。その大量移民で、酒と喧嘩が大好きというアイルランド人気質が嫌われ、アイルランド移民排斥の差別や偏見にさらされたという。それが彼らを団結させ、マフィアのような裏社会での権力を握るようになったという。
アイルランド系移民の物語は、ハリウッド映画に数多く登場する。例えば「遙かなる大地へ」を思い出す。アイルランドの貧農の若者(トム・クルーズ)が地元の娘(ニコール・キッドマン)とともにアメリカンドリームを夢見て、アメリカへ渡る。西部の未開拓の荒野で、先着順に土地をタダであげるという競争に参加して自らの土地を手にいれる、というサクセス・ストーリーだった。
これらの映画は、貧しい小国のアイルランド人の悲哀と、かれらがアメリカへ渡って成功したり、権力の座へ上り詰める成功物語で、「アイリッシュマン」もそのひとつだ。
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