2022年12月14日水曜日

危ない映画 ベスト3

 Dangerous Movies

”危ない映画” について今までも書いたが、あらためてベスト3(ワースト3)をまとめてみた。いずれも古い映画だが、その価値観が現在も現実の世界でしっかりと生き続けていていることが ”危うい” 。


黒人のデモが起きると、インディアンをやっつける騎兵よろしく
KKK 軍団が勇ましく駆けつけて、黒人にリンチを加える。
代表的なのが「国民の創生」で ”史上最悪の名画” と呼ばれている。”名画” と呼ばれるのはグリフィス監督の画期的な映画手法によるのだが、内容的には酷評されてきた。黒人への人種差別をあおり、悪名高い KKK を正義の味方として賛美している。しかし、トランプ政権時代には、 KKK が復活したり、警官が黒人に暴行するなどの事件が多発した。また大統領自身も差別的な発言を繰り返して人気を得ていた。100年前のこの映画が主張する差別主義が現在も堂々と生きているのが怖い。

メロドラマの形をとっている映画だが、
男尊女卑的で、うっとりした表情の女性
が見あげているのは、摩天楼のてっぺんに
すっくと立っている主人公の建築家だ。

トンデモ映画の ”怪作” とされる「摩天楼」も悪名高い。極端な自由主義の思想家アイン・ランドの原作を映画化したもので、主人公の天才的な建築家に、その思想を代弁させている。才能のある人や努力した人が成功して豊かになるのは当然で、国がそれを規制するべきでないと演説する。そして、成功した人から税金を取って、それを貧しい人を救済する社会福祉に使うのは止めろと主張する。 今でもアイン・ランド思想を信奉する政治家は多く、彼らは”新自由主義者” と呼ばれる。トランプ政権下で、国民健康保険制度を廃止してしまい、貧富の差がますますひどくなったのもそれだ。


党大会で支持者が熱狂している。しかし
この直後、男がフェイクであること
がバレると一転して怒号の嵐になる。
現在、世界じゅうでポピュリズムが(日本も含めて)勢いを増している。「群衆」は、ポピュリズム政治家が生まれ、大衆に支持されていくメカニズムをドラマにしている。古い映画だが、いまだに現代性のあるテーマだ。ある新聞社が、適当に選んだ普通の男をヒーローにでっち上げて、男を売り出す大キャンペーンを張る。国民が友愛の精神で助け合う理想社会を作るという、新聞社が書いた原稿で演説を男に繰り返させる。国民の熱狂的な人気を得て、政党まで結成するようになる。しかしそれは新聞社の社長が大統領選挙に出馬するために仕組んだ罠で、男は利用されていただけだった。今の時代なら新聞ではなく SNS だが、メディアによって「群衆」が簡単に操られてしまう恐ろしさを描いている。


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