2022年12月22日木曜日

映画「フォレスト・ガンプ 一期一会」

 Forrest Gump

1 9 9 4 年のこの映画をずいぶん久しぶりに観た。’6 0 〜’7 0 年代を舞台にした映画なので、今ではどういう受け止めをされているのかネットの書き込みを見てみた。”愛と感動の物語” と受け止め、主人公の誠実な生き方に共感する、といった感想ばかりだった。確かにそうではあるが、映画にはある政治的メッセージが込められてることに今の人は気づかないと思う。

主人公のフォレスト・ガンプが自分の半生を回想する形で話は進むが、所々に 1 9 7 0 年代のニュース映像が挿入される。ガンプとその恋人の人生が、当時の時代環境に大きく翻弄されてきたことを映画は強調している。

知能指数が低いガンプは子供の頃からいじめられてきたが、母の言いつけを守って誠実に生きてきた。やがてベトナム戦争に従軍するが、上官の命令に真面目に従って献身的に戦い、負傷した戦友を助けたり、といった大活躍し、帰国すると大統領から勲章をもらう。戦後も両脚を失ったかつての戦友を親身に助けたりしている。

一方の恋人ジェニーは自由奔放に生きている。’6 0 〜’7 0 年代は、ヴェトナム戦争の敗北やら、公民権運動の激化、経済格差の拡大、など社会が激変し、夢と希望の国アメリカの時代は終わった。それを背景に、従来の価値観を否定する若者たちの「カウンター・カルチャー」の波が巻き起こる。ヒッピー、ドラッグ、フリーセックス、などだ。ジェニーもこのような世界に飛び込んでいく。そして念願のフォークシンガーになり、舞台でジョーン・バエズ風の反戦ソングを歌っているのだが、なぜか全裸だ。


「カウンター・カルチャー」は反戦運動や人種差別反対運動につながり、ジェニーも反戦組織に加わる。そして古い世代と若者たちの間の摩擦や対立が生じる。ガンプは伝統的な価値観を体現し、ジェニーは若者の価値観を体現している。監督のロバート・ゼメキス自身もその意図があることを認めている。

当時は、大統領のレーガンやブッシュが(そしてトランプへ続く)「アメリカをもう一度輝く偉大な国へ」というスローガンのもと、古きよき時代の復活を叫んでいた時代だ。この映画はそれら保守的な政治家を結果的を援護している。ガンプを ”善い人” として描き、反戦運動に加わっているジェニーを”不良" として侮蔑的に描いている。また反戦運動組織を、暴力やセクハラが横行する無法者集団として描いている。


映画の最後で、ジェニーは反戦組織から抜け出し、故郷に戻ってガンプと再会する。ところが両親はすで死に、家が廃墟になっているのを見て愕然とする。今までの生き方を後悔した彼女はガンプと結婚するが、わずか数日後に若くして死んでしまう。映画は感染症にかかったためとしか言わないが、状況からみて、エイズであることは明らかだ。映画は、奔放に生きた彼女に天罰が下ったのだと暗示している。以上のようにこの映画は、ラブストーリーに見えるが、とても政治性のある映画で、その点で批判を浴びることも多い ”名画” なのだ。



1 件のコメント:

  1. 毎年大みそかに放映されるBSプレミアムシネマで今年は「フォレストガンプ」が放映される予定だということを知っていたので、先ほど録画設定を終えたばかりでした。この辺のところしっかり観てみます。

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