2022年12月24日土曜日

映画「エルマー・ガントリー 魅せられた男」

「Elmar Gantry」 

最近、某宗教団体が問題になっているが、このような新興宗教が勢いを増した時代は、明治以降3回あったそうで、明治維新直後、1 9 3 0 年代の大恐慌時代、太平洋戦争の敗戦直後、だったという。いずれも世の中が大転換した時代で、それについていけない大衆の将来への不安につけ込んで勢力を拡大した。

アメリカでも同様で、1 9 3 0 年前後に工業化や都市化が進み、田舎の人々や年寄りたちが、時代に取り残されるのではないかという不安が渦巻いていた。その社会状況を利用して、巧みな話術で信者を爆発的に増やしたキリスト教伝道師を描いたのが、映画「エルマー・ガントリー 魅せられた男」だ。


サーカスのような大きいテントの会場に人を集めて集会を開き、大げさな身振り手振りによるショー的な面白さで説教をする。まず「お前らは地獄に落ちるぞ」と脅しておいて、次に「しかし神を信じれば救われる」と言って信仰を促し寄付をさせる。日本の”例の宗教団体” の手口と全く同じ。

ガントリーは、流れ者のセールスマン(フーテンの寅さん的な)で、信仰心などまったく無い男なのだが、美貌の女性伝道師に魅せられて手伝うようになり、信者の寄付集めで教会が大儲けするのに貢献する。

映画の最後でテントの会場が大火事になる。”神を信じる” 信者たちは人を押しのけて我先に助かろうとする。しかしガントリーは最後まで残って人々を助ける。ガントリーは「こいつらさっきまで神に命を捧げると言ってたくせに」と内心で思う。そして全てが焼け落ちた後で、許しを求める信者たちを見て、ガントリーはもう神を語ることをやめようと決めて去っていく。

ガントリーは実在した人物をモデルにしている。そのキリスト教福音派は、今でも隆盛を誇り、政治家と深くつながって、政治に影響を与え続けている。人工妊娠中絶反対や LGBT 運動反対、などの政策も彼らの力によっている。 


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