2022年10月14日金曜日

不思議な都市の絵

 Ken Yabuno

薮野健という画家の作品が面白い。イタリア(?)の風景で、街が丸い円盤の上に乗っているが、空と海の青が繋がっているので、円盤が空中に浮かんでいるように見える。そして面白いのは、三つの建物の消失点が別々のところにあること。中央の茶色い建物は正面から見た一点透視で描かれているが、左右の建物はそれぞれ別々の方向から見た二点透視で描かれている。つまり、画家は同じ場所にいたまま、視線を変えて3つの方向から描いている。固定した視点と固定した視軸で描くという透視図法の大原則を打ち破っていて、「1視点・多視軸透視」と呼ぶ人もいる。


同じ画家の多視軸透視のもう一つの例。これも不思議な絵で、ミラノの「ガレリア」と思われる建物を描いている。ここは道路が直交しているから、同一視点からは一本しか見えないはずだが、すべての道路が角度を変えて見えている。だから道路は放射状に拡がっているように見える。それを同一視点から描いたことを証明する(?)かのようにキャンバスに向かう画家自身の姿を描きこんでいる。



一般的に風景画では、正確な透視図法によって、都市の整った形、美しい形を客観的に表現するが、この絵ではあえてそれを無視することで、都市のファンタジー性のようなものを表現している。


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