2020年4月18日土曜日

公共空間のソーシャル・ディスタンス

Social Distance in Public

ソーシャル・ディスタンスの名著「かくれた次元」から、続きとして3回目の紹介をする。著者のホールはアメリカの大学で建築・デザインを教えていた人なので、ソーシャル・ディスタンスの研究も、空間設計の指針につなげる目的で行っていた。


空港ロビーのベンチの機械的に一直線に並べたベンチは、電車の座席と同じで、他人との物理的な距離は近いものの、お互いに会話をすることはない。このように他人との社会的関係のない人どうしの、よそよそしい空間を「離社会的空間」と呼んでいる。
イタリアなどでは、よく街中で輪になって議論している。歩道のカフェで、小さな丸テーブルのまわりを椅子が囲んでいる配置は、顔を寄せ合って話す文化をそのまま形にしている。このような人間どうしを互いに引きつける空間を「集社会的空間」と呼んでいる。
公共の施設でよくある円形のベンチは、カフェとは反対に外側を向いて座るので、空港のベンチよりさらに「離社会的空間」だ。混んでいない限り、他人とは2〜3メートル離れたソーシャル・ディスタンスを保って座る。人のまわりに目に見えないテリトリーを感じるからで、その中に入らないように気を使う。逆に他の席が空いているのに隣に座られると、テリトリーに侵入されたような不快感を感じる。

(余談だが、電車は、社会的関係のない人どうしの典型的な「離社会的空間」だから、他人の存在をほとんど意識しない。だから、電車の中で化粧している女性は、他人と分離されたテリトリーの内にいるという、自宅と同じような感覚になってしまい、きわめて個人的なことを公共の場でやれてしまう、と心理学者は説明している。)

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