2019年9月6日金曜日

タランティーノ映画の中の聖書

Tarantino movie and bible

前回書いたタランティーノ映画の「冗舌」についての追加。アデル・ラインハルツという人の「ハリウッド映画と聖書」という本によると、タランティーノの「クライム映画」や「バイオレンス映画」の中に、ブラックユーモアとして、聖書の引用がされているという。まさにタランティーノ的「冗舌」だが、それは彼が厳格なカトリック教育で育ったためだという。以下は同書より。

「パルプ・フィクション」で、主人公の悪党が人を殺す前に、ピストルをつきつけながら、旧約聖書の「エゼキエル書 25 章 17 説」を長々と暗誦してから「ズドン」とやる。悪党が自分の行動を聖書的な立ち位置から正当化していて、自分がキリスト的人間像であるかのように振舞っている。

「心正しい者の歩む道は、心悪しき者の利己と暴虐によって、行く手を阻まれるものなり。愛と善意の名によりて、暗黒の谷で弱き者を導きたる、かの者に神の祝福あれ。彼こそ兄弟を守り、迷い子たちを救う者なり。私の兄弟を毒し、滅ぼそうとする悪しき者たちに、私は怒りに満ちた懲罰をもって大いなる復讐を彼らになし、私が彼らに復讐をなす時、私が主であることを知るだろう。」


「イングロリアス・バスターズ」で、ナチ狩りをする特殊部隊は敵を見つけ次第殺してしまうが、一部は生かしておき、額にナイフで鉤十字を刻んで釈放する。ナチの悪行を後々まで世界に知らせるための「しるし」だ。

これは、聖書の「創世記」にある「カインとアベル」の物語からの引用だという。アベルを殺したカインは、処刑される代わりに、体に殺人者の刻印(しるし)を押されて追放される。この「しるし」が聖書のメッセージを世界に広める。これは「カインのしるし」という英語の熟語にもなっていて、キリスト教社会の常識だという。カトリック教育で育ったタランティーノは当然「カインのしるし」を知っていて、それを引用したというのだ。

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