Delvaux's perspective
幻想画家ポール・デルヴォーの絵は、近代的な街並みにローマ時代風の衣装を着た女性が彫像のようにたたずんでいたりして、時空間を超えた夢の世界を描く。
デルヴォーの「階段」は好きな作品で、地元の横浜美術館の常設展示品なのでたまに見る。なぜかマネキンが置いてあったり、壁には T 定規と三角定規が掛けてあったり、遠くにはローマ風神殿とクレーンが並んでいたり、と非現実的な夢の光景だ。そしてこの妙な形の建物の空間全体も何か変に感じる。遠近法のせいではないかと思い調べてみた。
床の消失点は窓の外に見える地平線の上に乗っていて正確だが、天井の消失点は地平線より上の位置に浮いている。そして床の消失点は女性の足元のあたりにあり、天井の消失点は頭のあたりにある。つまり消失点が二つあって、そのズレをつなぐように女性が立っている。
遠近法に反したこのズレの意図をこう解釈してみた。初め正面を向いていた時は主に床が見えていた。次に階段の上に女性が現れたので、顔を上げて視線を上へ向けると今度は天井が視界に入ってくる。この前後2つの瞬間を同じ一つの絵に描いたから二つの消失点がある・・・やはり夢の絵なのだ。
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