NEXUS : A Brief History of Information Network from Stone Age to AI
前回、「NEXUS 情報の人類史」について書いたが、今回はその具体的内容についてごく一部だけだが紹介してみたい。
「情報」の役割について、普通は下図のように捉えられている。人間は「情報」を得ることで「真実」を知り、それによって「知恵」と「力」を得て、何かを成し遂げる。しかし著者は、これは素朴すぎる見方だとしている。
実際はもっと複雑だとして、下の図示をしている。図の説明として、石器時代の人間がマンモスを狩るときの例をあげている。マンモスがいるという「情報」から「真実」を知る。そこで「知恵」をめぐらせてなんとかマンモスを仕留めたいと思う。しかし巨大な動物を一人で狩れるだけの力はない。そこで仲間を集めて協力しあうことで、それが大きな「力」になって成功する。この時、全員が同じ計画に同意し、命の危険に直面しても各自が役割を勇敢に果たす必要がある。この図の「秩序」とは、そのようなメンバーの団結力を生み出すもののことを意味している。そしてこの「秩序」は人類史上、法律や国家や宗教という形で発展してきた。
しかしこの「真実」と「秩序」は必ずしも一致しなかったり、お互いに矛盾する関係になることに注意すべきだとして、以下のような例をあげている。
「神」が人間を創造した絶対的存在であるということを全員が固く信じることによって、キリスト教社会が一つにまとまり「秩序」が維持されてきた。しかし、ダーウィンの「進化論」が、人間はサルから進化したものだという科学的な「真実」を明らかにすると、それは「秩序」を破壊することになるので、社会から激しい弾圧を受けている。
科学者が原爆を発明したとき、それが大量殺戮兵器だという「真実」を知りながら、政治家は、非人道的独裁国家の侵略から人々を救い、世界の「秩序」を守るためにという理由で日本に原爆を投下した。
自分たちは神に選ばれた国であるという聖書の「物語」を根拠にして、イスラエルの首相がパレスチナを爆撃し続ける。あるいはプーチン大統領が、自国の過去の栄光を取り戻すのだいう「物語」をもとに、隣国を侵略し続ける。さらにトランプ大統領は、他国によって自分たちの利益が奪われてきたという「物語」を作り、関税という武器で他国を攻撃する。しかしこれらの「物語」は客観的な「真実」にもとづいたものではない。だが「真実」を語れば、次の選挙で負けて、自分が握っている政権という「秩序」を失う。だから「物語」を言い続ける。
以上は本の第2章までの一部要約だが、最後は本題に入っていく。情報ネットワーク社会は、上記のようなこれまでの矛盾を乗り越えて、「真実」の発見をし、しかも「秩序」を生み出すという二つのことを同時にすることができるのだろうか? という問題だ。SNS や AI の発展のおかげで、フェイク情報によって簡単に社会秩序が乱されるような現状をみると、難しい課題に思えるが・・・
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