2024年11月13日水曜日

「情報の歴史 21」の読み方(前回の続き)

How to read the「The Longest Chronicle」 

松岡正剛の「情報の歴史 21」は情報の内容と手段が時代とともにどう変化してきたかを人類史的なスケールのなかで示している。情報に関係した出来事を1年分だけで 500 くらいが見開き2ページに小さい字でびっしりと埋められている。政治、経済、技術、芸術、文化、に分けられた5つのブロックを横断的に見て相互関係に着目していくといろいろなことに気づく。


例として上は 1925 年のページだが、美術に関心のある人だったら、「アール・デコ展」という小見出しに目がいくかもしれない。その近辺に小さい字で「グロピウスの国際建築」「ルコルビジェの輝ける都市」「ブロイヤーの金属パイプ椅子」「ワイマールのバウハウス」などの事項が並んでいる。あまり意識していなかったが、近代建築・近代デザインと同時代にアール・デコは生まれたことがわかる。商業主義的なアール・デコが、機能主義のモダンデザインから枝分かれしたムーブメントだったことに気付かされる。

「アール・デコ展」の右の文化のブロックには「フィッツジェラルドの小説 偉大なるギャッツビー」があげられている。後に映画化された「華麗なるギャッツビー」で、主人公の豪邸が金ピカのアール・デコのデザインで埋め尽くされていたが、なるほど両者は同じ年だったのかと納得がいく。

ギャツビーの下に「カポネとジョセフィンベーカー」の小見出しがある。「アル・カポネ, 密造酒の元締めに」や「ジョセフィンベーカー, パリ初演. レビューの女王として君臨, チャールストン流行」が挙げられている。ギャングや犯罪や退廃的なキャバレー文化の '20 年代だ。そういえばギャツビーも怪しげな裏社会で稼いで金持ちになったというストーリーだった。

一番左の政治のグロックには「ドイツ復興とヒトラー」と「ムッソリーニとスターリン主義」の小見出しがあり、「ドイツの大統領選でワイマール連合敗北」や、日本の「治安維持法公布」もあげられている。この年は全世界的に全体主義が台頭し始めた年だったことがわかる。科学技術のブロックでは、後に原爆の基礎になる「ハイゼンベルク, 量子力学の基礎的研究」があげられている。やがて戦争の時代へ突入していき、上記のようなさまざまな自由な芸術や文化が抑圧されていく時代を予兆させている。

このように、個々の出来事はすでに知っていることでも、それらを横断的に見て、関連付けることで、その時代全体を俯瞰的に知ることができる。これが松岡正剛のいう「関係の発見」だ。


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