Trevor Chamberlain & Aerial Perspective
遠近法といえば、普通は「線遠近法」だが、他にもいろいろな遠近法がある。その中でもっともポピュラーなのが「空気遠近法」だ。「空気遠近法」の意味がよく分かるのが、広重の「東海道五十三次」のなかの「庄野」だ。
この絵で、風になびいている竹林が描かれている。それは手前から奥へ、近景→中景→遠景の順に3段階が重ねられ、遠くへいくほど明度・彩度が弱められている。奥ほど自分との間にある空気の層が厚くなるから、フィルター効果が増してこうなる。さらにこの絵では空気の中に混じった雨の水滴が、フィルター効果をいっそう強めている。「空気」を描くことによって遠近の奥行きが表現されている。
水彩画の世界第一人者、イギリスのトレバー・チェンバレンの絵はすべて、空気遠近法を活かした魅力的な絵だ。この都会の川を描いた風景画で、「空気」を使って空間の広がりを見事に表現している。
手前のボート→対岸の工場→遠くの高層ビル、と遠くにいくにつれ明度・彩度が弱まっていく。この「空気遠近法」によって、「遠近感」だけでなく、「空気感」= 空気の存在を強く感じさせる。この場合は、ボートの煙や工場から出る排気ガスなどが混じった都会らしい濁った「空気感」だがそれを見事に表現している。「空気感」と雰囲気のことで、水彩画はその表現にもっとも適している。(画像は画集「Trevor Chamberlain」より)
これもチェンバレンのパリの街を遠望している絵だが、雨の日の霞んでいる遠景をムードをたっぷりに描いている。「雰囲氣」とは「大気」のことであり、「ムード」という意味でもある。「空気遠近法」を使うことによって「大気」を描くことができ、「ムード」を表現できる。
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