「TUCKER」
戦後まもなくの頃、野心家のタッカーが画期的な車を作ろうと試みたが、50 台作っただけで失敗に終わった史実に基づく映画だ。タッカーは「タッカー」という名の夢の新車を発表する。空冷のリアエンジンという低コストで出来る画期的な車で、しかも安全ガラスやシートベルトなど今日では普通になっている安全装備をうたい文句にしていた。そして当時はなかった流線型の流麗なスタイルだ。そのスケッチだけしかなく、影も形もない段階で巨額の出資を集め、生産工場を買収し、車の販売宣伝まで始めてしまう。
ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)は脅威を感じて「タッカー」を潰しにかかる。出来もしない車で金を集めた投資詐欺だとして裁判に訴える。その結果、工場は没収され、資金も引きあげられ、会社は潰れてしまう。
これは、コッポラとルーカスが組んだ、1988 年の映画だが、その当時は、安くて性能のいい日本車がアメリカ市場を席巻し、そのあおりで、アメリカの自動車産業が衰退の一途をたどっていた時代だ。工場の閉鎖や縮小が相次ぎ、労働者が日本車を叩き壊すデモが頻発した。日本への憎しみは激しさを増し、日米貿易摩擦に発展した。
しかしこの映画は、それを日本のせいにするのではなく、アメリカ自身が車の革新をする意欲を失った怠慢のせいだと、言っている。もし「タッカー」のような野心的な車を受け入れていれば、アメリカの自動車産業は日本車に負けることなどなかったろうにというのだ。
そのことをラストの裁判の場面で、タッカーに言わせている。「アメリカは、エジソンやライト兄弟などのように個人の発想を大事にすることで偉大な国になってきた。そして今度の戦争で、画期的な爆弾で日本を打ち負かした。それなのに今、大企業が個人の自由な発想を押さえつけようとしている。これではアメリカは将来、敗戦国の日本から車を買うようになる。それでいいのか!」
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