2024年7月9日火曜日

ヒトラーの選挙

 

今度の東京都知事選挙はずいぶんひどいものだったようだ。いろいろな点で、ヒトラーの選挙と比べたくなる。以下は、「ヒトラーの時代」(池内 紀)と、「ヒトラーの演説」(高田博行)による。

最初は泡沫政党だったナチス党が、選挙のたびごとに議席を増やしていき、最後に政権を奪うまでに至る。ヒトラーは暴力やテロで政権を奪取したわけではなく、選挙での巧みな演説で国民の支持を得ていった。演説は、与野党が対立ばかりしていて、何も決められない議会政治への批判で、それは強いリーダーを求める国民の心にささった。

政権をとってからのヒトラーは選挙公約を一つ一つ実行していく。敗戦と恐慌とインフレで壊滅状態だったドイツを建て直す。工業生産力を高め、国民の所得を1.5倍に増やし、失業者を激減させる。社会福祉を拡充し、豊かになった国民に週末に旅行に行くことを推奨し、安いリゾート施設を各地に作る。そして一般の労働者にも買える国民車「フォルクスワーゲン」を作り、全国に高速道路網「アウトバーン」を作る。(写真は、うれしそうな表情で「フォルクスワーゲン」の模型を見ているヒトラー。なお、説明しているのは設計者のポルシェ博士。)

こうしてヒトラーは、ドイツ国民の圧倒的な人気を獲得していった。独裁者ヒトラーを支えたのは、国民の「熱狂」だった。

ヒトラーは国民にメッセージを伝えるメディアとして「ラジオ」を重視した。富裕層しか持てなかったラジオを8分の1の値段にした「国民受信機」を作って普及させる。音楽やスポーツやドラマだけでなく、政局のおりおりにヒトラーの「ドイツ国民に告ぐ」が流れる。どの家庭でもこの瞬間、いっせいに静かになって聞き入ったという。そしてヒトラーは重要な政策の決定には必ず「国民投票」を行ったが、その時ラジオは国民に支持を訴えるための手段だった。現在の選挙での「ネットメディア」に当たり、その効果をヒトラーはすでに十分に認識していた。(写真は「国民受信機」の広告で、巨大なラジオの周りに群衆が群がって、ヒトラーの声を聴いている。キャッチコピーは「ドイツ中が国民受信機で総統を聴く」とある)

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