2023年9月27日水曜日

光を描く パステルの静物画

 Still Life in Pastel

パステル画は「光を描く」のが基本の基本だが、風景画だけでなく静物画も同じ。パステリストのリチャード・ピオンクの作品などはその好例。

陰を描かなければ光を描くことはできない。だから静物画の背景は、黒または暗い色にするのが原則。暗い中に光の当たったモチーフを浮かび上がらせことで、物の存在感を表せる。白い花瓶の光の当たったところが白く輝いているが、陰の部分は、暗い背景に溶け込んでいて輪郭もはっきりしない。明暗のコントラストをはっきりさせることで、光を感じさせることができるが、そのために背景を暗くする。


しかし背景を暗い色でベタ塗りするのは良くない。後ろの壁の一部をかすかに明るくして、そこにもわずかに光が当たっていることを暗示する。この絵で、後ろの壁に花瓶の影がうっすらと映っていて、空間感を感じさせるのも光の効果だ。モチーフのセッティングの時から、光と陰のコントラスト配分を意識しながらライティングを決める。部屋を暗くして、電気スタンドなどの点光源一つだけにすると光を捉えやすい。


後ろにあるボトルは、ハイライトの一点が見えているだけで、ほぼ背景に沈んでいる。手前のヤカンや果物には、点光源のおかげで、片側だけに光が当っていて、立体感がはっきりと浮かび上がっている。また、ヤカンのキズがついたような古びた質感や、透明感のあるブドウの質感など、モチーフごとの材質の違いを描き分けているのも「光を描く」ことの効果で、パステル画の最も得意なところだ。


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