2023年3月8日水曜日

映画「エッフェル塔」

「Eiffel」 

建設中のエッフェル塔のシーンがたびたび出てくるが、 CG ではなく、実物大のセットをパリ郊外の空き地に作って撮影したそうだが、迫力がある。


パリ万博のためのモニュメントを設計するコンペでエッフェルの案が優勝して採用されたが、鉄骨だけの機械的な形態が美しいパリの景観を壊すとして、猛反発を受ける。凄まじい反対運動の様子が映画にも出てくる。しかしエッフェルの信念は固く、パリのどこからでも見える 300 メートルの塔を作ってパリのシンボルにすることと、それを最先端技術である鉄骨を使った機能美のデザインにすること、という決意は揺るがない。

「無用で醜悪」と呼んで反対運動の急先鋒の一人だったモーパッサンが完成後に、中にあるレストランにたびたび来て食事をしていたが、理由を聞かれて、「パリの中でエッフェル塔を見ないですむ場所はここだけだからね」と言ったという話は有名だが、それほど近代建築に対する世の中のアレルギーが強かった。

「エッフェル塔物語」という本を調べてみたら面白いことが書いてあった。コンペに出した原案では、4本の梁柱からなる素っ気ないデザインで、装飾性は一切ない。(図左)最終形は基底部分のアーチなど、構造力学と関係ない装飾がいくつか加えられているが、世論を気にした変更なのだろうか? そしてコンペで対抗案として最後まで競い合ったブルデという建築家の案は石造で、古典建築のモチーフを多用したデザインで、なるほどこれならパリの街並みにマッチするだろうと思わせる。(図右)


ところで映画は、エッフェル塔完成までのストーリーと並行して、エッフェルが愛したアドリアンヌという女性とのストーリー(ありきたりのメロドラマ的)が描かれる。そしてラストで、エッフェル塔の形はアドリアンヌの頭文字「A」を形どったものだというナレーションが入る。これは映画を面白くするための脚色だろう(多分)。実際、冒頭で「事実に基づいているが、自由な想像による映画」という(お断りの)字幕が出る。


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