Wexner Center fore Visual Arts, 「LITTLE MAN TATE」
秋葉原にコイズミ・ライティング・シアターという、ルービック・キューブのような奇妙な形の建築がある。アメリカ人の建築家ピーター・アイゼンマンの設計によるが、彼は、近代建築の原理「形態は機能に従う」にとらわれず、現代彫刻のように自在な形を作った。構造の合理性を超えて形を作る思想は「脱構築主義」と呼ばれた。アイゼンマンの代表作は「オハイオ州立ウェスナー視覚芸術センター」で、白い巨大な格子が建物全体を突き抜けている。工事現場の「足場」のようで、これからこの中に建築ができるかのような不思議な空間になっている。この格子は何かの機能があるわけでなく、設計者の頭の中の観念をそのまま形にしてしまったような建物だ。
この建物が「リトルマン・テイト」(1 9 9 1 年)という映画に登場する。7歳の天才少年が主人公で、プロ並みの絵を描き、ピアノを自在に弾き、詩を書き、大学レベルの数学の難問をあっというまに解く。 I Q は信じられないほど高い。少年に惚れ込んだ英才教育の学校の女性校長にぜひ入学をと誘われるが、子供を溺愛しているシングルマザーの母親は、それを断ってしまう。少年に母親のような態度で接する校長と、本当の母親が子供の引っ張り合いをする・・・
少年は頭が良すぎるゆえに、友達が一人もできない悲哀を抱えている。最後には超飛び級で大学に入学するのだが、大学に入っていくシーンで、この建物が使われている。監督がなぜこの建築を選んだのか。おそらく、現実と無関係な、観念的な建築のイメージを、「頭でっかち」の少年の頭脳に重ねているはずだ。
映画のラストは、もっと頭のいい子供が現れて、少年は2番になってしまう。その代わり、たくさんの友達ができて、初めて人生の幸せを味わう。張りあっていた二人の ”母親” も仲良くなる、というハッピーエンドで終わる。
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