2019年3月23日土曜日

絵画の中の光の方向が右か左かは大問題か?「絵画の中の光と陰」(三浦佳世)の記事について



日経新聞に三浦佳世という人が「絵画の中の光と影」という連載コラム記事を書いている。3 / 1の記事では、これまで大多数の絵が左光源で描かれてきたので、人はそれに慣れてしまっていて、左光源の絵を自然に感じて、右光源の絵は不自然に感じると言っている。その根拠にフェルメールをあげている。

統計的には確かに左光源が多いし、我々アマチュアでも左光源で描くことが多いが、それは記事でも言っている通り、単純に手暗がりにならないようにするためで、とくに「自然な感じ」にしたいなどということとは関係ない。100% 左光源で描いたフェルメールはむしろ特異な例で、右光源の絵も山ほどたくさんある。その例をあげる。

この二つは、ともに 17 世紀オランダの室内画で、左はフェルメールで、右はそのライバル的存在だったホーホの作品。比べると、フェルメールは左光源で、ホーホは右光源で描いている。しかしどちらも「自然な」感じで、ホーホの絵が「不自然」に感じることもない。光をどう表現するかは絵画の重要なテーマであるのは間違いない。しかし「光の方向が右か左か」はこの著者が大発見と思っているほどにはたいした問題ではないことがわかる。

この記事は、同筆者による著書「視覚心理学が明かす名画の秘密」の内容をほぼ繰り返しているが、「学が明かす」というにしては科学的な根拠が薄い主張が多い。

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