この絵の右下にある足温器は中に炭火を入れて足を温める道具だが、これは明らかに壁に対して平行でなく、斜めに置かれているから、窓などの消失点と一致しないのは当たり前だ。一つの消失点に収斂するのは平行な物同士のあいだのことで、斜めのものはそうではないというのは遠近法の常識だが、著者はどんな場合も消失点は必ず一つでなければならないと信じこんでいるようだ。
その関係の作図。窓の消失点(VP1)を求め、それを通る水平線がアイレベル(E L)だが、足温器の消失点(VP2)がその線上にぴったり乗っている。(斜めに置かれている足温器は、左右に二つ消失点ができるが左側は省略した)フェルメールの遠近法が正確であることがわかる。
ちなみに消失点は必ずしも一つだけではないことの例として、遠近法の教科書にこんな風景スケッチが載っていた。右手前の道路と遠くの道路は平行でなく、角度がついているから消失点(VP) は二つ別々の位置にできている。さらにこの場合は、手前の道路が下り坂になっているのでアイレベル (EL) にも乗っていない。
(図は "Objective Drawing Techniques" より)
遠近法に忠実だったフェルメールに対して「消失点を無視している」というのが「視覚心理学者」が発見した「名画の秘密」らしい。
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