2019年8月1日木曜日

アクリルで描く「メカニズム」

このところ、機械を描くのがマイブームになっている。今回はパワーシャベルをモチーフに、アクリルで描いた。一度パステルで描いた題材だが、もっと粗い(荒い)感じを出したくて、アクリルで Ver. 2 をやってみた。メディウムの特性の違いをあらためて実感。
"Mechanism"   Acrylic,  Panel,  90 cm × 65 cm(30 号)



2019年7月26日金曜日

江戸の補聴器

Hearing aid in Edo

補聴器の一種で、集音器というのがある。聞こえにくいとき、耳に手を当てるのと同じ原理で、耳たぶの面積を広げて音を集めるという超アナログな道具。コンサートなどで使うのが主な目的だが、意外なくらい効果がある。

こんなことを思い出したのは、こういうアナログ式の補聴器が、すでに江戸時代から使われていたことを本で知ったから。西洋から入ってきた色々な道具が国内でも模造されて、江戸商人たちがそれで商売をしたので、補聴器もけっこう普及していたらしい。下の絵で、左の男がラッパ式の補聴器を耳に当てている。なお、右の男が目に当てているのは望遠鏡で、視覚補強と聴覚補強の道具が対で描かれているのが面白い。(「大江戸視覚革命」より)


2019年7月24日水曜日

ドービニー展

Daubigny

もう6月で終わってしまったが、「ドービニー展」(損保ジャパン日本興亜美術館)がよかったで、今頃思い出したように紹介を。


バルビゾン派の巨匠ドービニーは水辺の風景が多く、「水の画家」と呼ばれた。

この「アトリエ舟」に乗ってセーヌ川を上り下りして描いた。

森の中の小川のほとり。

晩年には、印象派のはしりのような明るい色調になっていく。それで「バルビゾン派から印象派の架け橋」と呼ばれる。


2019年7月22日月曜日

のぞき眼鏡、のぞきからくり

The western scientific gaze and popular imaginary in Edo

江戸時代「のぞき眼鏡」という、絵を見せるための光学機器が大人気だった。この絵でその仕組みがよく分かるが、下に置いた絵をミラーに写し、その像をレンズを通して覗く。すると小さな絵が視覚いっぱいに広がるから、本当の風景を見ているようなリアル感が得られる。

司馬江漢などは、この装置用の専用の絵を描くようになる。拡大して見られるために、肉筆の絵や木版画では粗さが目立ってしまうので、銅版画風の緻密な絵が描かれた。

のぞき眼鏡と同じ原理で、複数の人が同時に絵を見ることができる「のぞきからくり」と呼ばれる装置もでき、浅草などで見世物に使われた。この絵の右上に、これで見ることのできる絵のサンプルが描かれているが、遠近法による風景画だ。風景が本物のように浮き上がってくるような迫真性をもたらすために遠近法が必要だった。こういう絵が、大衆が世界を見る見方に革命を起こし、浮世絵などにも影響を与えていった。
(タイモン・スクリーチ著「大江戸視覚革命」より)

2019年7月20日土曜日

江戸時代の眼鏡屋と視覚革命

Glasses shop of Edo

江戸時代の眼鏡屋の店頭風景。看板にメガネの種類が書かれている。近眼用や老眼用、女性用や子供用、などの他に、ルーペやプリズムではないかと思われるものもある。そして客が試しているのは望遠鏡だから、メガネに限らず、レンズを使った商品全般を扱っていたようだ。

この絵は、メガネを使うとよく見えますよという広告のようなものだろうか。右上に「御近目鏡」とあり、近視用メガネをかけると遠くまでよく見えることを強調している。遠くが小さくなるような極端にきついパースで室内が描かれている。

この絵で、メガネをかけたまま眠っている四人の男がそれぞれ別々の勝手な夢を見ている。江戸時代にメガネや光学機器が普及した結果、視力いう意味にとどまらず、人々の世界を見る見方が変化していった(視覚革命)という。


(以上、タイモン・スクリーチ著「大江戸視覚革命より)

2019年7月18日木曜日

「アルルの寝室」の遠近法

The perspective of  "La Chambre à Arles"

松方コレクション展にゴッホの「アルルの寝室」が出ている。自由奔放な荒い筆致や、形のデフォルメは、「対象の描写」から「内面の表現」へと移行していったポスト印象派の特徴と言われている。

そうだと思うが、しかしこのようなコメントはどうか?
『「アルルの寝室」は、ベッドや椅子などの消失点がバラバラで一致していない。遠近法の無視による空間の歪みが、見るものを不安にさせ、それでいて惹きつけられる魅力になっている。』

確かめてみると多少の狂いはあるが、かなり消失点は一致している。 ゴッホ自身の内面の表現でありながらも、対象を正しく描写するという、それまでの絵画の基本は守っているように思える。

2019年7月16日火曜日

松方コレクション展のゴッホの「アルルの寝室」

La Chambre à Arles

今、国立西洋美術館でやっている「松方コレクション」展に出ているゴッホの「アルルの寝室」はオルセー美術館からの借り物だ。

終戦と同時に、松方コレクションは、敵国資産としてフランス政府に押収された。しかし松方コレクションは個人の資産だからおかしい。政府がフランスに要求してやっと返還されたが、超重要作品は返してもらえなかった。「アルルの寝室」はその一つ。

返還交渉で、「アルルの寝室」とともに最大の争点だったルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち」は返還されて、西洋美術館で常設展示されている。

コレクションを展示するための美術館を建設することがフランス側の返還の条件にされて、その結果、コルビュジェの国立西洋美術館が生まれたから、悪いことばかりではなかったといえる。