2026年7月2日木曜日

風景画の中の静物 ワイエス

Wyeth    Still-Life in Landscape

ワイエスのこの絵「Spring Fed」は、牛舎の中の牛用の水飲み場を描いている。水槽があり、窓の外には牛が見える。そして壁にかけられたバケツが目をひく。このバケツは斜めに置かれているが、遠近法的に極めて正確で、金属の質感表現もすごい。バケツの存在感が際立っている。このバケツだけで静物画として成り立つほどだ。ワイエス自身も、この絵を描こうとひらめいたのは壁にへばりついたこのバケツのためだったと語っている。

ワイエスは、なんでもない日常的な物に目を向けて観察し、それを描写することが多い。それは風景画の中の点景として軽く扱われるのではなく、絵の中の主役のようになっている。だから風景画と静物画が融合したような絵になる。

 

この絵の制作過程で、たくさんの習作スケッチが行われているが、バケツを中心にして、どう画面全体を構成するかに注力している。以下の一連のスケッチを見るとそれがよくわかる。

最初は主役のバケツを細密描写することから始めている。







背景の検討をしている。後ろに仕事をしている奥さんをクイックスケッチで描く。しかし現場に奥さんがいたわけではない。他の時に描いたデッサンをはめ込んでいる。





奥さんを消して窓を描いている。牛舎の雰囲気を出そうとしているが、主役はあくまでバケツだ。






窓の外に牛を描く。画面の全体構成が固まってきた。







バケツと水槽を改めて細く描写する。水槽の水なども書き込んでいる。







着色をしてほぼファイナルに近づく。


ワイエスは写実的なために見た通りに忠実に描いていると思われがちだが、実際は色々な要素を組み合わせながら自分の描きたいイメージを表現できるように絵を組み立てていることが、この制作過程から読み取れる。

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