2025年8月25日月曜日

万博のプロパガンダ建築

Paris Expo 1937

大阪万博が ”時代遅れ”と批判される理由の一つは、大屋根リングに代表されるように、昔の万博を思い出させるからだろう。戦前の1937 年のパリ万博などのような。

パリ万博で、数年後に第二次世界大戦の「独ソ戦」で戦う両国の「ドイツ館」と「ソ連館」がエッフェル塔を挟んで向かい合って建てられた。世界の覇権を狙う全体主義国家どうしの「プロパガンダ建築」だった。



ナチスドイツと、スターリン主義時代のソ連の芸術を研究した「全体主義芸術」(イーゴリ・ゴロムシトク著)という本で、このプロパガンダ建築について詳しく説明しているので一部を引用する。

「ドイツ館は、160 m の天を目指すような高さを誇り、神聖なるドイツ産の鉄と石から建設された。」「塔の上にナチス国家の象徴である鉤十字のついた鷲が据えられている。」「ドイツの生活の姿を変えるという使命を帯びた、ヒトラー総統の偉大な理念を鮮やかに表現している。」

「ソ連館は8階建の建物の高さの塔で、国家の上昇志向を強調している。」「塔の頂上には、ソ連の象徴である鎌とハンマーを持った労働者の像が据えられている。」「ソ連館は、達成と勝利の道におけるソヴィエト連邦の目的への意志と理念を鮮やかに表現している。」

上の二つの説明でわかるように、両者にはっきりとした共通性があることを同書は強調している。全体主義国家の理念を大げさに強調するプロパガンダ建築であることだ。政治体制が違って対立していても、全体主義という両国の目指す方向は全く同じであることが、二つのパビリオンのデザインにはっきり現れている。


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