2025年2月20日木曜日

映画「フェイブルマンズ」

Fabelmans

2年前のスピルバーグの映画を、もう一度ネット配信で見た。スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画で、子供の頃に親からもらった8ミリカメラで 遊んでいた時代から、青年になって映画監督の助手に採用されるまでを描いている。後に傑作を次々に生み出していくスピルバーグの原点がわかって興味深い。

中学生の時に家族でキャンプに行ったとき、その一部しじゅうを撮影したエピソードが出てくる。帰ってから編集機で編集していると、撮っている時には気づかなかったことが写っている。いっしょに行った父親の友人が母親とキスをしているのが画面の片隅に写っているのだ。ショックを受けるが、母親思いのスピルバーグはそのシーンはカットして家族に見せる。映画は必ずしも真実を語るわけではない、ということを自ら体験したのだ。

もう一つは高校生時代のエピソードで、ユダヤ人のスピルバーグはいじめにあう。いじめるのはハンサムでカッコいいクラスの人気者だ。撮影係を任されていたスピルバーグは、卒業記念パーティーで思い出ムービーを上映する。そこには、いじめっ子がアホのような姿に描かれている。実写フィルムであっても、編集の仕方で事実とは正反対の意味を持たせることができるという「映画の力」を実感する。

映画作りをあきらめきれないスピルバーグ青年は、大学を中退して、大手映画会社に監督助手として採用される。その監督があこがれの巨匠ジョン・フォード監督だ。初めて挨拶に行った時のエピソードがラストで出てくる。おどおどしながら部屋に入っていくと、壁じゅうにフォード監督の映画のポスターが貼ってある。「駅馬車」「捜索者」「静かなる男」「怒りの葡萄」など名作の数々に圧倒される。

フォード監督は、壁の写真のうちの2枚を指さして、これについて説明しろという。「馬に乗った2人の男が遠くを眺めていて〜」などと言うと「バカもん!」とフォードにしかられる。「一枚は地平線が画面の下の方にあり、もう一つは上の方にある。絵画では、真ん中に地平線がある構図は最低だが、映画も同じだ。映画は絵画と同じ芸術だということを忘れるな。」と言われる。「じゃ頑張れよ」と言われて部屋を出るまでわずか3分間だが、スピルバーグの映画人生を決定づける瞬間だった。


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