普通の本が「健康で長生きするためにはどうするべきか」という観点なのに対して、著者の本に一貫しているのは「人間はやがて死ぬのは当たり前だから、長生きばかりを考えず、残りの人生を楽しく生きる方がいい」というスタンスだ。だから「80 歳の壁」を超えてもっと長生きする秘訣を教える本ではない。
「高齢者は健康診断を受けるな」と強く主張していることに、著者の考え方が凝縮されている。健康診断では、たとえば血圧について、健康な人の平均数値と比べた数値データだけで健康度を判断する。しかし著者は、高齢者は血圧が高いのが当たり前で、そんなことで我慢や自制の生活をするのは馬鹿らしいと言っている。
だから著者は「お酒の好きな人は高齢になったからといって控えるのではなく、飲み続けなさい。」と言っている。そのことで寿命が縮まるかもしれないが、飲んで毎日を楽しく暮らした方がよっぽどいい、ということだ。食べ物にしても、塩分や脂分が多い食事は控えろとよく言われるが、そんなことは気にぜず、食べたいものを食べて幸せに過ごそうと著者はいう。つまり健康診断は、あれはダメこれはダメと言って、高齢者が好きなことをすることに制約をかけるから受けるなという意味だ。
この主張について、間違った理解をする人もいるから気をつけたい。例えば、自分は長生きしたいから、もう健康診断を受けるのは止めよう、と思ってしまうことだ。著者は長生きするために検診を受けるなと言っているわけではない。著者が一貫して、「高齢者は『幸齢者』になれ」と言っているのは「長生きを考えるよりも残りの人生を『幸せ』に暮らそう」ということだ。もっというと、「寝たきりになってでも長生きしているほうが『幸せ』ですか?」ということだ。
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