2017年7月31日月曜日

松本竣介の「Y市の橋」

Shunsuke Matsumoto  " Bridge of Y City "

松本竣介は横浜在住だったので、「Y市の橋」の Y は横浜のこと。モチーフになった橋が横浜駅のすぐ前にある「月見橋」で、今は高速道路やビルに囲まれてきゅうくつな光景になっている。「横浜の土木遺産」にこう書いてある。「土木史的にはとりたてていうほどの橋ではないが、松本竣介の「Y市の橋」の画題になったことで文化史的価値が高い」

「Y市の橋」にはバリエーションがいくつかある。戦中から戦後にかけての作品で、3つめは爆撃で破壊されている。絵にある鉄骨は橋の構造物ではなく、後ろにある線路(現 JR)の跨線橋で、上の写真にも見える。どれも寂寥感あふれる松本竣介独特の世界だ。


2017年7月28日金曜日

映画タイトルのモーション・グラフィックス

Motion graphics in movie titles

映画タイトルのモーション・グラフィックスの秀作3つ。どれもセンスがいい。「Art of the Title」より。(再生時間はそれぞれ約2分)


「キス キス バン バン」 
http://www.artofthetitle.com/title/kiss-kiss-bang-bang/#

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」 
http://www.artofthetitle.com/title/catch-me-if-you-can/#

「パニック・ルーム」 
http://www.artofthetitle.com/title/panic-room/#

2017年7月25日火曜日

映画タイトル

Movie title

いいタイトルは見ただけで映画が頭に浮かぶ。あるサイトが選んだタイトルのベスト10 。こちらで→ https://www.newbluefx.com/blog/top-10-iconic-movie-fonts/


オリジナル書体でなく、既成のフォントを使ったタイトルの例を紹介したサイト。Bodoni,  Helvetica,  Futura,  などおなじみのベーシックなフォントが多くて参考になる。
こちらで→ https://www.linotype.com/7903/current-movie-fonts.html


「The movie title stills collection」はすごいサイトで、百年前から現在までの数千のタイトルが収集されている。タイポグラフィに関心のある人などにも参考になりそうだ。
こちらで→  http://annyas.com/screenshots/


2017年7月22日土曜日

「ベルギー 奇想の系譜」展(その3)

Exhibition  " Fantastic Art in Belgium "  # 3

宗教画のイメージが強いルーベンスがこの展覧会で奇想の画家の一人として扱われているのが意外だった。ルーベンスといえば「フランダースの犬」のネロ少年と愛犬パトラッシュが最後にアントワープ大聖堂にたどり着いてやっと見ることのできたのがルーベンスの祭壇画だった。(ちなみにこれの精巧なレプリカが徳島県の大塚国際美術館にあり、一見の価値がある)

キュレーターの解説によれば、「地獄への恐怖心を煽る」ことで観る者の信仰心を喚起するのがヒエロニムス・ボスをはじめとするベルギーの奇想絵画のおおもとにあるが、ルーベンスもその主題を写実的な表現で受け継いだと解釈できるという。今回出展の「反逆天使と戦う大天使聖ミカエル」を見て納得させられた。
( BUNKAMURA  ザ・ミュージアム 〜 9 / 24 )

2017年7月19日水曜日

「ベルギー 奇想の系譜」展(その2)

Exhibition  " Fantastic Art in Belgium "  #2

運河沿いにレンガ造りの工場のような建物があるが、窓ガラスは割れていて廃墟になっている。暗くひっそりとして人間の存在を感じない。ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンクというベルギー象徴主義の画家の幻想的な作品。


同じくベルギー象徴主義でさらに有名なのが、今回は来ていなかったがクノップフの「見捨てられた町」という作品。ベルギーの普通の家だが、家を描いているのではなく、家が「無人であること」を描いている。中世に交易で栄えた都市ブリュージュが衰退して死都になってしまった(今は観光客だけの町)空虚さを象徴的に描いたと言われている。

以前アントワープにしばらく滞在していたときに狭い裏通りをよく歩いた。中世と変わらないような、でこぼこした石畳の道と黒くすすけた石造りの家の街並みが暗く陰鬱で、人がいる気配がない。ベルギーでこういう幻想絵画が生まれる理由がわかったような気がした。

2017年7月15日土曜日

「ベルギー 奇想の系譜」展

Exhibition   " Fantastic Art in Belgium "

ベルギー幻想絵画の歴史をたどる展覧会で中身が濃い。 500 年のへだたりがあるヒエロニムス・ボスとルネ・マグリットの二人は 一見無関係に見えるが、それが繋がっていることを、タイトル通り「系譜」として見せてくれる。


たくさんあるなか個人的な好みでひとつだけあげると、デルヴォーの「海は近い」という作品。ギリシャ風の女性やローマ風の建築が、電柱やガス灯などと混じって描かれている。人間たちは生きていない大理石彫刻のようだ。時間が止まったような非現実的な夢想の世界。
( BUNKAMURA   ザ・ミュージアム   〜9 / 24 )

2017年7月11日火曜日

ソール・バス の 映画タイトル

Saul Bass's Movie Title

ソール・バスの映画タイトルを動画で見られるサイトを見つけた。「北北西に進路をとれ」「サイコ」「ウエストサイド物語」など  45 作が見られる。ほとんどが 50 年くらい前だから、モーション・グラフィックスもタイトル・ロゴも完全アナログデザインだが、いまだに新鮮でおしゃれで魅力的だ。

こちらで →  http://www.artofthetitle.com/designer/saul-bass/titles/

(左)「7年目の浮気」(右)「ウエストサイド物語」
(左)「ある殺人」(中)「黄金の腕」(右)「荒野を歩け」

2017年7月7日金曜日

「レオナルド × ミケランジェロ」展

Exhibition  "Leonardo da Vinci e Michelangelo"

二大巨匠の素描の展覧会。イタリア語で「素描」を「ディゼーニョ」(disegno)と言うそうだ。同じ語源ながら別々の意味に分化してしまった「デッサン」と「デザイン」の両方の意味を含む言葉らしい。

二人とも大きな工房の親方で、たくさんの弟子を使って作品を作っている。親方の素描をもとに弟子が原寸の下絵を描いたりすることも多かったようだ。素描は、親方が示す「構想」や「基本設計」のようなものでデザインに似ている。同じイタリアのカロッツェリアの車づくりを連想してしまった。

二人とも建築・土木・機械などの設計をしたが、そういう場合の素描も絵画・彫刻のときと全く変わらない。芸術と技術が分化していなかった時代の素描がデッサンでもありデザインでもあったことことがよくわかる。

(三菱一号館美術館 〜 9 / 24 )

2017年7月4日火曜日

「アルチンボルド」展

Exhibition  "Arcimboldo"

だまし絵の奇抜さに目が奪われがちだが、原画を間近かで見ると果物や花やなどの細密描写のうまさの方に感心する。これは「静物画」ではないかと思えてくる。実際、絵画の新ジャンルとして「静物画」が生まれたのはこの時代だったようで、調べてみると・・
16世紀に栄えたハプスブルグ家は海外植民地も含めて広大な領地を持っていたので、世界中の動物や植物が集まってきた。珍奇さや不思議さへの知的好奇心から、コレクションする博物館ができ、博物学が発達し、知識を集める図書館も作られた。そして図鑑などのために植物を細密に描写することが始まり「静物画」の誕生につながる・・

ハプスブルグ家の宮廷画家だったアルチンボルドは静物画を使って肖像画を描くだまし絵を発明する。珍しいもの、不思議なもの、面白いものへの人々の欲求にぴったりはまって大受けしたようだ。

(国立西洋美術館 〜9 / 24)