Production Designer
映画の「プロダクション・デザイナー」は、ビジュアルに関わるデザインを総合的に行う重要な役割。エンドロールで監督と並ぶくらいに「Production designer :
〜」が大きくクレジットされている。観客が映画に没入できるように、その作品世界を創造する。成功すれば、観客が映像化された作品を見たとき、それが「現実」であるかのようなリアリティを感じる。(「映画美術から学ぶ「世界」のつくり方」より) ちょうど画家がカンバスの上に「世界」を描くのと同じように、プロダクション・デザイナーはスクリーンの上に「世界」を描く。実際、ほとんどが美大で絵画を勉強した人たちだという。
1978 年のリチャード・ギア主演の「天国の日々」は映像の美しさで評価が高く、プロダクション・デザインの成功例といわれる。(プロダクション・デザイナーはジャック・フリスクという人) 20 世紀初頭、出稼ぎの季節労働者たちが働いている西部の大農場を舞台にした男女3人の愛憎劇なのだが、アメリカの広大な平原の幻想的でノスタルジックな表現が素晴らしい。
このイメージがアンドリュー・ワイエスの絵のイメージと似ているといわれるが、大平原の手前に人間がいて地平線かなたに建物がある、といったイメージが確かに似ている。
そして、平原の中にポツンと建っている農場主の邸宅のセットは 昔のイギリス風で、アメリカ西部ではありえない「ウソ」なのだが、映画のイメージを演出するのに最大限役立っている。そしてこれもエソワード・ホッパーの絵と比較される。建物の雰囲気や画面の構図がよく似ている。
ワイエスもホッパーもアメリカの原風景のようなものを描いたが、この映画も同じテーマなので似てくるのだろう。