現在のような意味での静物画に成り切ってはいないがこんな形から始まったらしい。魚屋の店先を描いた風俗画だが、確かにこの絵は魚の種類を魚類図鑑的な感覚で「列挙」しているように見える。
そういえば、だまし絵のアンチボルドも肖像画の形をとっているが、拡大して見ると物が精密に描かれていて実質的な静物画だ。皇帝が世界中から集た珍しい動植物のコレクションをモチーフにこれも図鑑的に「列挙」している。
経済的に繁栄していた当時のオランダで、虚栄の虚しさを寓意的に表した静物画が大流行したそうで、この絵では、頭蓋骨、消えたローソク、倒れて割れそうなガラス、ボロボロの本、時の経過を示す時計、など空虚さの象徴となるものを集めて「列挙」している。