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2024年10月2日水曜日

「美術を楽しむ日」

 A day of enjoy art

日本記念日協会という団体がある。公的な団体ではない。特定の組織や業界などが宣伝目的で「〜の日」を申請して登録料を払えばすぐに認定される。だからバカバカしい記念日だらけで、例えば今日10 / 2 だけでも「芋煮会の日」「とんこつラーメンの日」「豆腐の日」など、10 件くらいが登録されている。

その 10 / 2 の中に、「美術を楽しむ日」という妙な日が登録されている。これも「それがどうした?」という感じの記念日だ。申請したのは、女子美術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、の「4美大」だそうだが、その点に違和感を感じる。

毎年、国立新美術館で卒業制作展「五美大展」が開かれている。「五美大」とは、上の4つのほかに日大芸術学部が入っている。なぜ「4美大」だけで申請したのだろうか?

さらには、東京芸術大学、金沢美術工芸大学、京都市立美術大学、愛知県立芸術大学、大阪芸術大学、など国公立や地方の美大がある。これらが連携すれば、もっと身のある「記念日」を作れたのではないか。4美大以外にもこれらの大学の出身者や教員の知人がいる身としてそう思う。


2024年9月21日土曜日

英国ウェールズ地方で買ったロマネスク風石彫

Romanesque 

むかし、イギリスのウェールズ地方の土産物店で買った石彫。20 cm 位と小さいが、中世のロマネスク彫刻風で、とても魅力的だ。ロマネスク彫刻は奇怪でしかもユーモラスなのが特徴だとされるが、これにもその特徴がみられる。実際にあったものの縮小レプリカなのか、それとも土産物用に創作したものかわからないが。



2020年8月18日火曜日

「ぎっしり・びっしり」の部屋「MUSEUM」の始まり

 Museum

ヨーロッパの王侯貴族たちが、世界中から集めた珍しい動物・植物・鉱物などを陳列した部屋を作った。これが「MUSEUM」(博物館)の始まりだった。見たことのない珍品が天井まで部屋を埋め尽くしている。見る人を圧倒したので「驚異の部屋」(ヴァンダーカンマー)と呼ばれたが、それは「ぎっしり・びっしり」の陳列のおかげだった。

MUSEUM に陳列された物の情報は、本という形にされて、凝縮された「知識」としてまとめられていく。百科事典が生まれたのもこのころだった。それらの本を集積した大規模な図書館が生まれる。下はウィーンの「宮廷図書館」だが、やはり天井まで「ぎっしり・びっしり」と本が並んでいる。古今東西のあらゆる知識がここにあることを示し、王権の権勢を誇っている。

1 8 世紀になると、王侯貴族がコレクションした絵画を展示する博物館ができ、それが美術館の始まりになる。美術館は「Museum of Art」というように、あくまで博物館の一種だった。だから同じ考え方で、「ぎっしり・びっしり」と埋め尽くすように陳列した。今のようにゆとりをもって作品を一つずつ鑑賞できるようになるのはずっと後のことだ。

(収蔵品の無い「国立新美術館」が、国際標準からして「Meseum」と呼ぶことができない理由は上のような歴史からきている。「ぎっしり・びっしり」どころか、空っぽのただの貸画廊だから、英語名を「The Ntional Art Center, Tokyo」という苦しい名前にせざるを得ない。)


2019年11月23日土曜日

埴輪「見返り犬」の犬らしさ

5th century's dog-shaped Haniwa

5世紀頃の埴輪だが、飼い主の声に振り返ったポーズで犬の可愛さを100% 表現している。これ以上なく犬を単純化したすごい造形力のこの彫刻家(?)に会ってみたくなる。

人間と犬の関係について書いた「ヒト、犬に会う」という本に面白い実験の話が出てくる。ヒモを引くと食べ物が出てくる仕掛けで、オオカミと犬に食べ物を取ることを覚えさせる。その後でヒモを引いても食べ物が出ないように変えて、再度やらせる。するとオオカミはすぐあきらめるが、犬は「エッ、どうして?」と実験者の方を振り返るという。この「人間を振り返る」という人間に似たコミュニケーション行動がオオカミとの決定的な違いで、犬が家畜化した原因だという。

この埴輪はまさに、人間の方へ振り返った最も犬らしい瞬間を形にしている。

2019年7月26日金曜日

江戸の補聴器

Hearing aid in Edo

補聴器の一種で、集音器というのがある。聞こえにくいとき、耳に手を当てるのと同じ原理で、耳たぶの面積を広げて音を集めるという超アナログな道具。コンサートなどで使うのが主な目的だが、意外なくらい効果がある。

こんなことを思い出したのは、こういうアナログ式の補聴器が、すでに江戸時代から使われていたことを本で知ったから。西洋から入ってきた色々な道具が国内でも模造されて、江戸商人たちがそれで商売をしたので、補聴器もけっこう普及していたらしい。下の絵で、左の男がラッパ式の補聴器を耳に当てている。なお、右の男が目に当てているのは望遠鏡で、視覚補強と聴覚補強の道具が対で描かれているのが面白い。(「大江戸視覚革命」より)


2019年3月16日土曜日

氷川丸のアール・デコ

Art-Deco of cruise ship Hikawamaru

また氷川丸へ行って、船室のアール・デコを眺めたが、何度見ても美しい。日本にあるアール・デコは、その様式を学んだ建築家が、それに日本的な味付けを加えたものが多い。しかし氷川丸に最も純粋なかたちで残っているのは、アール・デコの発祥地フランスのインテリアデザイナーがコンペに勝って、そのとうり作られたため。

いちばん有名な階段室の手すり。19 世紀終わりのアール・ヌーボーが有機的な植物模様だったのに対して、20 世紀初めのアール・デコは、定規で作図できる幾何学模様が特徴で、近代的な工業製品が進歩した「機械の時代」を象徴しているかのようだ。当時最先端の大型客船の氷川丸のデザインに使われているのは話が合っている。とはいえアール・デコは語源が「装飾芸術」(デコラティブ・アート)のとおり、今から比べると装飾的だ。

天窓のステンドグラス、鉄扉、柱、家具、など、これぞアール・デコといった美しいグラフィックがいたる所にある。

2018年10月23日火曜日

横浜 真葛焼ミュージアム

Makuzu Ware


横浜駅近くにある「真葛ミュージアム」へ初めて行ってみた。真葛焼は現在では途絶えてしまったが、明治初めに宮川香山という人が横浜で窯を作って始めた陶磁器。初めから海外への輸出を目的にしていて、ちょうどジャポニズムの時代でもあったからか、大人気を博した。2次元の絵付けを3Dにしたようなデザインで、精緻な技巧がすごい。

しかし日本の「わびさび」感覚からすると、下品とか悪趣味と感じる。宮川香山自身も国内向けには普通の日本的な作品を作っていたという。

これは「和風バロック」なのかもしれない。バロックの建築や家具は、手のこんだ凝った装飾でびっしりと埋め尽くし、悪趣味すれすれまでになる。「シンプル」とは真逆の美意識で、そういうバロックの伝統がある西洋で真葛焼が受け入れられたのは分る気がする。