2026年5月25日月曜日

小説「後継者たち」

 「The Inheritors」

「後継者たち」を数年ぶりで再読。ウィリアム・ゴールディングが 1954年にノーベル文学賞を受賞した作品。前々回書いた映画「蝿の王」の原作(小説も同名の「蝿の王」)に次ぐ作者の第2作目で、「蝿の王」と同じ思想が底流にある。

初めの人類はネアンデルタール人だったが、5万年くらい前に滅亡して現在の人類種であるモサピエンスに交代したが、この小説はその人類交代の始まりを描いている。

小説は、ある架空のネアンデルタール人とその仲間の物語で、彼らは純真で無垢そのもので悪意というものが全くない。仲間どうしが助け合う平和な生活を送っている。そこへ「新しい人」(ホモサピエンス)がやってくる。彼らは格段に優れた知能と技術を持っていて、ネアンデルタール人の住む食べ物が豊富な土地に侵入し、生活圏を奪っていく。

ネアンデルタール人は、川にさえぎられた狭い地域に住んでいて外へ出ることができない。ところが「新しい人」たちは川を丸木舟に乗ってやってきた。それを見てネアンデルタール人はびっくり仰天する。この小説で面白いのは、「新しい人」たちが丸木舟を作る過程を詳しく書いていることだ。太い木を切り倒して枝を払い、小さい丸木をローラーにして転がして運び、川のそばで幹の中をくり抜いて丸木舟にする。それを複数の人間が協力し合ってやる。それはネアンデルタール人には思いもつかなかったことでただ茫然と見ている。

舟を作りはじめる時リーダーは「頭の中に絵が見える」と言う。つまり、この世にまだ存在していない舟というものを頭の中で想像し、その形を実際の物として作ってしまった。まさにこれは「デザイン」だ。ネアンデルタール人は実際に眼で見える物、手で触れる物しか認知できないが、ホモサピエンスは実際に存在しない物を頭の中に思い浮かべることができるようになった。この脳の働きの変化は「認知革命」と呼ばれている。

ホモサピエンスの認知革命によって、現在に至る文明の発展をもたらしたが、同時にそれは欲望と征服という悪をもたらした。丸木舟は空母や潜水艦に発展し、戦争ばかりの現代に繋がっている。それがゴールディングがこの小説で言いたかったことだ。


2026年5月24日日曜日

江戸の観光ガイドブック「名所図絵」

 Tourist Guidebook in Edo

観光旅行ブームだった江戸時代には、「名所図絵」という観光名所のガイドブックがたくさん出版されていた。「伊勢参宮名所図絵」「善光寺名所図絵」「金毘羅参詣図絵」「東海道名所図絵」などなど日本各地の有名観光地はすべてカバーされていた。それは現地の雰囲気をイラストで表現していて、現在のインスタ映え的な写真ばかりのガイドブックとは違う生き生きとしたしたものだった。それらを紹介した『江戸の旅  名所図絵の世界』からいくつか紹介する。


「大和名所図絵」の中の奈良の春日大社の光景。今現在も、奈良公園(一部は春日大社境内)で観光客が鹿に鹿せんべいを与えているのが普通の光景になっているが、すでに江戸時代から今と同じだったことがわかる。茶屋で観光客が鹿に鹿せんべいをあげている。左側に茶屋の店主が湯を沸かしている。左下には子供が紙を鹿にあげようとしているが、母親がその子の帯をさりげなくつかまえながら隣の女性と話している。



「江戸名所図絵」のなかの一枚で、人々が行き交う賑やかな商店街を描いている。店は「薬種店」という看板があるから、ドラッグストアのような店だろうか。「図絵」は編集プランナーがいて、専属の絵師がイラストを担当した。この「江戸名所図絵」は全7巻 20 冊 だったそうだ。



「河内名所図絵」のなかの「河内木綿」という一枚。今の大阪府八尾市は河内木綿という木綿の名産地だったそうだ。中央に木綿を織る女性が見える。左には、店主が反物をを見せながら商談をしている。右には糸車を運んできた娘がいる。人々の生活をいきいきと描いている。



京都名所案内「都林泉名勝図絵」の仲の高級料亭「角屋」の風景。冬の雪景色を描いている。中央の大座敷で宴会をやっている。右の小座敷にも別のグループがいる。二階のベランダから雪景色を眺めている人がいる。手前の庭では雪だるまを作ったり、雪投げをしている。




2026年5月23日土曜日

映画「蝿の王」

 「Lord of the Flies」

前から気になっていた映画「蝿の王」を DVD で見た。登場するのは子供達だけだが、決して気持ちのいい映画ではない。むしろ"いやーな感じ"の映画だ。ストーリーはこんな感じ・・・

船が遭難して少年たちが無人島に漂着する。子供たちは陸軍幼年学校の生徒で、頭がよくて規律を身につけた子供達だ。彼らはサバイバルのために一致団結しようと、リーダーを決め、規則を作り、仕事の役割分担を決める・・・

ところが些細なことからいさかいが始まり、二つのグループに分裂してしまう。秩序は崩壊し、権力闘争になっていく。やがて暴力を振るい合う抗争になり、ついに殺し合いになってしまう・・・

映画の原作は、イギリスの作家 ウィリアム・ゴールディングで 1983 年にノーベル文学賞を受賞している。ゴールディングは大戦中に従軍した。ナチスによるユダヤ人大虐殺を目の当たりにしたことから彼の思想が出来上がった。彼はこう言っている。『虐殺をやったのは、未開の首狩り族ではない。文明の伝統を背負った教養のある人々が、冷静に行なったのだ。社会制度の影に隠れている人間の強欲さや残虐性がむき出しになったのだ。』

こう書けばこの映画は、ゴールディングの思想を、極限の状況に置かれた子供たちの物語に置き換えたアレゴリーであることがすぐにわかると思う。見た人は自分のうちに潜んでいる人間悪を見せつけられた思いがする、

2026年5月22日金曜日

江戸時代の東海道旅行

 Traveling Tokaido

江戸時代の一般庶民は旅行好きだったようで、当時の旅の様子が「大江戸庶民事情」(石川英輔)に紹介されている。

東海道は旅行客が最も多い街道だった。有名な歌「お江戸日本橋七つ立ち〜」は、京都に着くまでの旅を沿道の地名を織り込んで歌う道中歌だが、この「七つ」というのは当時の時間で夜が明ける「明けムツ」より1時間早いまだ暗い時間で、そのくらい早朝に出発した。だから歌は「〜こちゃ高輪 夜明けて提灯消す」と続く。

東海道は日本橋から京都まで約 500 km で、それを10 日で歩くのが標準なので、一日平均 50 km歩いた。その距離に合わせて、各宿場が設けられていた。当時の人はとても健脚だったようだ。暗くならないうちに宿場に着き旅籠に泊まり、入浴と食事を済ます。終わるとすぐに寝て、次の日も朝早く起きられるようにした。

宿に到着したばかりの旅人。風呂が沸くまでゴロンとひと休みしている。
(絵は「五十三次北斎道中画譜」からで、庶民が旅をする様子を描いた画集)

同書は、当時の費用を概算している。旅籠の宿泊代は2食付きで一泊 200文くらいで、昼食代などで 100文くらいかかり、京都につくとしばらく滞在してあちこち見物する費用など全部合わせて 2両ぐらいだったという。これはちょうど大工などの職人の月収くらいの額に当たるそうだ。だからちょっと貯金をすれば誰でも旅に行けた。今でいえばヨーロッパあたりへ旅行するくらいの感覚だったようだ。

江戸の一般庶民は「連」という同好会サークルを作り色々な趣味を楽しんでいたが、旅行の「連」もたくさんあった。そういう人たちはグループツアーで旅行をした。前回書いたように江戸は女子会が盛んだったが、女性どうしのツアーも多く、東海道は女性の旅人で賑わっていたそうだ。右図は当時の観光案内パンフレットに載っている女性の旅人たちの絵。

江戸時代は治安がよく、山賊や雲すけなどは実際にはほとんどいなかったそうだ。だから女性だけの旅も安全だったという。毎年人口の6人に1人が東海道の旅に出かけたという。江戸は旅行ブームだったそうだ。

2026年5月21日木曜日

江戸の女子会

 Get-together of women

江戸の周辺には、四季折々の名所があり、庶民たちは物見遊山に出かけた。春の桜、夏の納涼、秋の月見、冬の雪見などを楽しむ様子が浮世絵や錦絵にたくさん描かれている。それら物見遊山の絵を見ると、女性の姿が圧倒的に多い。女子会や女子の飲み会をやっている。

これについて、石川英輔「大江戸庶民事情」によると、長屋住まいの職人の妻でも夫がせっせと働いている間、女性たちは仲間どうしで誘い合わせ、物見遊山に出かけていたという。江戸では男に比べて女がずっと少なかったため、妻になってくれる女性がいるだけで幸運だったという。だから女性が遊山に行くくらいでご機嫌になるなら文句を言うどころでなく、せっせと働いて女房を遊ばせていたそうだ。


隅田川沿いの料理屋での賑やかな飲み会。三味線を弾いたり、
歌ったり、踊ったり、すでにゴロンとしている女性も。

夏、隅田川に面した料理屋で月見の女子会をやっている。

女子だけで屋形船を貸し切って隅田川の花火大会を見物している。

日常的にも居酒屋で女子の飲み会をよくやっていた。
左下で二人が飲んでいる。その奥で手酌で飲んでいるお一人様も。


2026年5月20日水曜日

プッシュ型情報とプル型情報

 Push-type information & Pull-type information

情報にはプッシュ型とプル型がある。プッシュ型情報は TV 放送のように、受け取る側の意向に関わりなく、一方的に送られてくる情報。プル型情報は VOD のように、受信者が欲しいものを取りに行く情報。ネットの SNSでいうと、Facebook は FB 友全員に自動的に配信されてくるプッシュ型だが、ブログは読みたい人が読みにいくプル型になる。だから目的に応じて両者を使い分ける。

FB は仲間うちの交流が主目的で、個人的・日常的な内容が中心になる。その情報は流れて一日で消えていく。

一方ブログの情報は、ネット上に蓄積されていき、その情報を不特定多数の人が検索して読みに来る。だから3年たっても5年たっても検索でヒットした人のアクセスがある。だから読まれるだけの内容が必要で、個人的・日常的な日記のような内容はブログには向いていない。


2026年5月19日火曜日

AI にツッコミ質問すると

Is AI intelligent ? 

AI にこんな質問をしたことを以前書いた。「 AI って頭のいいおバカですか?」という質問に対して答えはこうだった。「 AI は人間が一生かかっても得られないほどの膨大なデータを学習しているので知識は超一流で『頭がいい』です。しかし言葉を『記号の並び』として処理しているだけで、内容を実感として理解していないから私は『おバカ』です。」・・・と正直かつ的確な答えだった。 AI の本質を AI 自身が語っていて面白かった。

ところが最近ある知人が、これ以上さらに AI の本質をついた話しを SNS に書いていたので、以下に紹介する。それはある映画が面白くなかったので、 AI になぜかを聞いてみたら、答えはいろいろな映画評論に書いてあることを寄せ集めただけの平凡な内容だった。そこでさらに突っ込んだ質問をした。それは「 AI さんの映画の内容理解は、評論や解説のテキストデータからですか?それとも映画そのものを見て映像や音から解釈しているのですか?」

それにたいしてが答えは「私は映画を直接見て解釈している訳ではなく、世界中に存在する解説、評論などの膨大なテキストデータを学習した結果から映画の内容を理解してお答えしています。」という答えだったそうだ。

そしてさらに「私は、映画全体の流れ、映像がもたらす心理的効果、音響の繊細なニュアンス、などを人間のように五感を使って体験し、そこから独自の解釈を生み出すことはできません。私は世の中にある解釈の傾向を整理して提示しているだけです。」と続けた。

そして結論として「予備知識なしに純粋に映画だけを見てその意図を見抜くというのは、高度に知的・感性的な行為です。それは人間だけが持っている力で、私にはできないことです。」

 AI はとても正直に答えている。この間2時間くらいかけて AI と対話したそうだが、質問者のツッコミ力に感心した。


2026年5月18日月曜日

いろいろな国の独立運動

 Independence Movement

映画「シビルウォー」は、西部のカリフォルニア州とテキサス州の西部連合軍が連邦政府軍と戦う内戦を描いている。しかしこれはまったくの荒唐無稽なフィクションではなく、今現在実際に、カリフォルニア州とテキサス州に起きている独立運動を踏まえている。カリフォルニア州とテキサス州は、政策面で連邦政府と対立することが多いが、経済力が強く、GDP は全米1位と2位の州だ。今は住民の署名活動をしている段階だが、来年には住民投票に持ち込もうとしている。住民の支持率はかなり高いという。憲法の制約があるから実現は難しいようだが。

映画で、両州連合軍は「Western Forces」と呼ばれていて、その旗が面白い。2つの星はカリフォルニアとテキサスを意味している。実際の星条旗には州の数である50 の星があるが、それをもじっている。二つの州が新しいアメリカの建国をするというメッセージになっている。
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ついでに、これ以外の国の独立運動について。

イギリスは UK (United Kingdom) という通り、4つの王国の連合国だが、そのうちのスコットランドはイギリスからの分離・独立を目指している。自治政府は一方的に住民投票を行ったが中央政府はそれを違法だとした。しかしスコットランド民族党の勢力は強く、対立は続いている。

スペインのカタルーニャ地方は、独自の歴史・文化・言語を持っていて、スペインからの分離・独立を目指している。州政府が一方的な独立宣言をしたことから、中央政府との激しい対立が生じ、現在も混乱が続いている。

もともと独立した琉球王国だった沖縄が、明治時代に日本に併合されたという歴史を背景に、沖縄の日本からの独立を目指す琉球独立運動がある。しかし県民の支持率は数%と低い。

2026年5月17日日曜日

ドキュメンタリー「History 101」

 「History 101」

NETFLIX で配信中のドキュメンタリー「History 101」は、現在世界で問題を引き起こしているさまざまなことについて、その歴史的始まりから説き起こし、これからどうなっていくかを問うている。だから番組のキャッチフレーズは「この地球で、我々は何を得て、ここからどこへ向かおうとしているのか?」となっている。

取り上げるテーマは多岐にわたる。
科学技術の問題(原子力、宇宙、ロボット、プラスチックなど)
政治経済の問題(中東の石油、社会格差、中国の台頭など)
人間生活の問題(ファストフード、女性運動、人工授精など)


例えば現在ホットな事案である「中東の石油」については、その歴史的背景をわかりやすくたどっている。20 世紀の初めにイギリスが中東の石油を初めて発見すると、中東を支配下に置いて、石油利権を独占する。戦後になると中東各国は独立し、イギリスを追い出す。それらは独裁国家であり、石油の利益を国民のために使わず、独裁者が独り占めする。産油国どうしが連携する OPEC で生産調整をして、石油の価格を維持する。アメリカが石油利権を確保するために、産油国を攻撃して、中東紛争が何度も繰り返されてきた。・・・などが記録映像とインフォグラフィックでわかりやすく解説する。

2026年5月16日土曜日

映画「シビルウォー アメリカ最後の日」

 「Civil War」 

2年前に見た映画だが、NETFLIX でやっていたので、もう一度見た。

西部のカリフォルニア州とテキサス州が連合して、アメリカ合衆国から独立しようとして戦争を起こす。激しい内戦になるが、西部軍が東部へ向かって侵攻し、ついにワシントンに到着する。政府軍と西部軍が激突して激しい市街戦になるが、最後に西部軍はホワイトハウスに突入する・・・


こう書くと荒唐無稽なフィクションのようだがそうでもない。日本ではあまり報じられないが、カリフォルニア州ではトランプ大統領の強権的な政治に反発して、「カリフォルニア独立運動」が現実に起きている。署名活動をしていて、来年には住民投票に持ち込もうとしている。もし実現すれば GDP 世界第4位の国になるという。

外国移民に対して寛容なカリフォルニア州は、トランプ大統領の極端な移民排斥政策に反対している。去年、政府が容赦ない移民拘束をロサンジェルスで行ったとき、住民の大規模な抗議デモが起きた。それに対してトランプ大統領は州兵を派遣して鎮圧しようとして大規模な衝突が起きた。映画は、こういう「分断国家」アメリカの現実を踏まえている。

映画にそれを象徴するようなシーンがある。道路封鎖している政府軍の兵士が通りがかりの一般市民を拘束する。銃を突きつけながら一人ずつ「お前はどの種類のアメリカ人だ?」と出身地を聞いていく。「コロラド」「フロリダ」「ミズーリ」などに続いて「香港」と答えた人間を即射殺する。

ラストで、ホワイトハウスに突入した西部軍は隠れている大統領を探す。するとTV ニュースでお馴染みのプレス発表室に女性報道官が手を挙げて出てくる。「大統領は停戦交渉を求めています」と言うが即射殺されてしまう・・・

2026年5月15日金曜日

風景の中の人物

Figure in landscape 

風景の中に人物を描くとき、遠近法的に間違いを起こさないように、という注意がネットの SNS に流れてきた。今まで何度か描いてきたことだが、図がうまくてわかりやすいので、もう一度取り上げる。


左図が OK で、右図が NG 。遠くのものは小さく見えるというだけの単純な遠近法の理解だと、右のように描いてしまう。正しくは左図のように、遠い人も近い人も、頭の高さは一定で、地平線上にある。

印象派の巨匠カイユボットの絵にいい例がある。パリの街をたくさんの人が行き交っているが、近くの人も遠くの人も頭は皆地平線上にある。2枚目で地平線(赤線)を引いて確かめた。



2026年5月14日木曜日

窓から差し込む光とホッパー

Edward Hopper

ネットの SNS で、パースペクティブについての説明がよく流れてくるが、最近こんな図があった。窓から差し込む光をどう描くかという説明で、なかなか親切な図だ。 


それで思い出すのはエドワード・ホッパーだ。ほとんど全ての作品でと言っていいくらい窓から差し込む光の絵を描いた。


何もないガランとした部屋に窓から差し込む光だけを描いている。
最も有名なのはこの「海辺の部屋」。海が見える大きな窓から光が差し込んでいる。壁と床にあった光の形を描いている。









朝陽が差し込むカフェテリアで、夜勤明けの女性と、出勤前のサラリーマンがコーヒーを飲んでいる。壁の光が朝の雰囲気を出している。








朝陽が差し込む部屋で、壁や床にあたる光の形が面白い造形になっている。起きたばかりの気だるそうな女と、まだ寝ている男。都会の憂愁を好んで描いたホッパーの絵だが、窓からの光が重要な要素になっている。






どこか訳ありの物語性のある絵を描いたホッパーだが、この「朝の太陽」は有名な作品。起きたばかりの女が窓の外を気だるそうに見ている。多分夜勤明けで遅い目覚めなのだろう。壁に当たった光が朝のイメージを強調している。

オフィスの窓を外から描いた絵だが、室内の光と影が画面構成上な重要な要素になっている。






列車の車内の絵だが、窓からの光が床に当たっている。ホッパーはあくまでも光にこだわっている。


2026年5月13日水曜日

新聞対ネット

 Newspaper vs Internet

新聞購読をやめる人の理由は2種類あるようだ。新聞を「読む」という面倒くささがなく、手軽に情報を得られるネットで充分という人。もうひとつは、新聞の報道は偏っていて、真実を伝えて信頼できるのはネットの方だという人。


朝日新聞が戦時中に戦争賛美の報道で世論を煽り、その世論に押されて政府は開戦に至ったということは今ではよく知られている。「朝日新聞の戦時社説を読む」(室谷克実)という本は同紙の当時の記事を一つ一つ調べてその実態を検証している。


東條英機の絶賛、英米を撃滅せよと戦意高揚を煽る、死んだ特攻隊員への賛美、お国のために命を捧げようと呼びかけ、銃後の国民は一致団結せよと呼びかけ、本土決戦になっても竹槍で戦おう、・・・などと今読むとすごい記事を連日掲載している。景気のいい論調に煽られて、国民は熱狂的に戦争賛美へ突き進んでいった。おかげで同紙は購読者数トップになった。しかし戦後は同紙は一転して反戦・平和主義へ大転換した。


新聞は本当のことを書かないと思って購読をやめた人は、ネット情報の方は真実だと信じている。ネット上の極端な意見や、偽情報を見て、自分は新聞が書いていない真実を知ったと思ってしまう。それが拡散されて世の中全体の空気になっていく。主要メディアが新聞からネットに変わった現在でも、新聞の時代と同じ構造だ。人々がメディアに煽られるという危険性は変わっていない。


2026年5月12日火曜日

「スマホはどこまで脳を壊すか」

Smartphone 

榊浩平という脳科学者が書いた「スマホはどこまで脳を壊すか」という本は、スマホの使いすぎがいかに脳に悪影響を及ぼすかを医学的に調べている。そこに面白い(恐ろしい)話が出てくる。

この写真は、スマホを一日中使っている人の脳を MRI で撮ったもので、上が脳の右側、下が脳の左側の写真。黒い部分が脳細胞が損傷していることを示している。ちょうど肺癌になった人の肺のレントゲン写真が黒くなるのと同じ。スマホの使用頻度がさほどでない人は、黒い部分がほとんどなく、白いままだという。

脳には、認知機能を支える領域や、記憶や学習に関わる領域や、言葉に関係する領域などがあるが、写真はそういう領域が死んでいることがわかる。つまり、スマホに依存している人は、ものを考えたり理解したりする知的活動のための機能がダメになっている。だからこうなると、子供の場合は成績が悪くなり、大人の場合は認知症になる。

脳は負荷を与え続けなければ衰えていく。読書と違って、スマホは流れてくる情報を受け身で受け取るだけなので、脳はほとんど働いていない。脳を「使うこと」によって「脳の運動不足」を防ぐ必要があると同書は警告している。


2026年5月11日月曜日

SNS 時代の今

 

最近の SNS のフェイク情報・デマなどを利用した政治活動が目にあまる。特に最近は生成AI を使った偽画像が拡散される。理性的な政策論争よりも、過激な主張ほど一般受けしやすいので、どんどんエスカレートしてゆく。そして選挙にも影響を与えたり、世論誘導したりする。

政治家だけでなく、ジャーナリズム側も SNS を利用する。政府の記者会見でツッコミ質問をして、それを SNS で発信する。それは政府の闇を暴く的な極端な意見で、反権力であることがジャーナリストの正義だと信じている。 

政治学者の永井陽之助はこう言っている。「政治権力への抵抗のポーズと思っているものが、実は別の権力に対する迎合であることが多い」「権力に抗議する姿勢が実は『多数派ムード』や『時代の空気』に追従しているだけの場合が多い」「こういう言説は、世論や民衆のムードが変化すれば、手のひらを返すように変節してしまう」

 世の中全体が SNS 依存症になっている今への警告になっている。


2026年5月10日日曜日

新種ウィルスが発生

Penicillin

新種のウィルスが発生して、感染したオランダ人が死亡したと報じられていた。各国はパンデミックを防ぐ対応を始めたという。それでコロナの時に読んだ本を思い出した。「世界史を変えたパンデミック」(小長谷正明)という本は、歴史上のパンデミックがいかに世の中に大変化をもたらしたかについて書いた面白い本だ。その中に日本におけるペニシリン開発についての話が出てくる。

第二次世界大戦中、アメリカで「ペニシリン」という強力な薬ができたらしいという噂が入る。しかし日本とドイツは交戦国なのでアメリカの情報が入ってこないから、独自開発せざるをえなかった。

ドイツは終戦までに開発に成功しなかったが、日本は研究者を総動員して開発に成功した。終戦の一年半くらい前にはすでに量産もしていたそうだ。おかげでたくさんの負傷兵の命を数うことができた。東京大空襲の時も民間人の命を救った。医学先進国の日本の成果だった。

そして同書に面白い話が出てくる。開発を成功できなかったドイツは、撃墜したアメリカ機のパイロットが持っている救急用ペニシリンを回収していたそうだ。しかしそんな微量では一般兵士には使えない。ヒトラー暗殺未遂事件(トム・クルーズ主演の「ワルキューレ」で映画化された)が起きた時、大事にとってあったペニシリンを重傷を負ったヒトラーに打って命を救ったという。


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2020年6月19日金曜日

「世界史を変えたパンデミック」

A History of Pandemic

コロナを機に感染症関係の本をいろいろ読んだが、いちばん面白かったのが「世界史を変えたパンデミック」だ。日本に関係する部分からちょっとだけ紹介。

戦争中、アメリカでペニシリンという強力な薬ができたという噂が入るが、ドイツも日本も交戦国だから詳しい情報が入ってこない。それで自国で独自開発しようと研究が始まる。ドイツはなかなか成功しないまま敗戦を迎えてしまったが、日本は研究者を総動員して敗戦の一年半前くらいに完成させ量産もしていた。おかげでたくさんの負傷者の命を救えたという。

ドイツは、撃墜した米軍戦闘機のパイロットの救急バッグからペニシリンを回収していたそうだ。しかしそんな少量を兵士に使うわけにはいかない。ヒトラーの暗殺計画事件(映画にもなったワルキューレ事件)で重傷を負ったヒトラーにそのペニシリンを初めて使った。おかげでヒトラーは一命をとりとめた・・・



2026年5月9日土曜日

上海の小路

 Shanghai

16 年前、上海に行ったとき、街をブラブラ歩きしていた時の風景。表通りからちょっと入った小路が魅力的だった。建物はレンガの壁で、道は石だたみというヨーロッパの古い街並みを思わせる。両側にしゃれたブティックの店が並んでいる。

描いてはみたが、その場の雰囲気が出せなくてお蔵入りしていたのを引っ張り出して手を加えてみた。



2026年5月8日金曜日

オホーツク海の日の出

 Sunrise    Sea of Okhotsk

これも冬の北海道を車で走り回っていたときの風景。オホーツク海に面した漁港の街「紋別」で泊まったが、ホテルの窓から海が一望できる。海は東側だから日の出が見られるはずと思って、翌朝暗いうちに起きて待った。期待どうり、空が茜色に染まり始めて、太陽が水平線に顔を出す瞬間を見ることができた。3分後にはもう普通の朝になってしまった。



2026年5月7日木曜日

生活支援給付金

 

生活応援給付金の案内がきたので、申し込みをしてみた。さまざまな電子クーポンを選べるが、うっかりミスで関係のないアイコンをタップしてしまった。しかし修正しようとしてもできない。コールセンターに電話してみたら「一度選んだものを修正することはできません」ということだった。なぜですかと聞いたら、「二重給付を防ぐためです」との答え。それで 5000 円もらうことはやめた。

そもそもマイナンバーカードを利用すれば、いちいち申し込みをしなくても自動的に給付されるシステムにできるはずだが、マイナンバーカードのシステムが中途半端にできてしまっているからそれができない。


2026年5月6日水曜日

日本海の残照

 Aftergrow Japan Sea

押入れの中からボツにした絵がたくさん出てきた。これは数年前、冬になると毎年のように北海道をレンタカーでドライブしていた頃の絵。夕暮どきに日本海沿いの国道を走っていたら、脇道があったので入っていくと残照の海が見えた。車から出ると猛烈に寒い。線路があって、カンカンと鳴って遮断機が降りた。ここは 札幌-小樽-函館を結ぶ函館本線の、小樽に近いところ。



2026年5月5日火曜日

地下鉄の緊急時用表示

 Graphic design for emergency

市営地下鉄の電車内で見かけたこの図は、SOS ボタンや、消火器や、非常口などのマークがパラパラと配置されている。しかしそれが何を意味するのか分からなかった。

だが近づいてよく見ると、車両の形が描いてあって、SOS ボタンなどが車内のどこにあるかの位置を示す図であることがわかった。しかし肝心の車両の形の線が細くてほとんど見えない。しかも「現在位置」がマークに紛れて小さく表示されている。だから全体の位置関係がまったくわからない。緊急時にこんな図は何の役にもたたない。

グラフィックデザインの最大の使命は「情報の伝達」だが、この図はそんなことはおかまいなしだ。


2026年5月4日月曜日

「カイロス」ロケットの打ち上げ失敗


昨日(5/3)の日経新聞に、今年3月に民間ロケット「カイロス」が3回連続で失敗したことについて解説している。

スペースワン社の「カイロス」は民間ロケットとはいえ、実は政府が進める宇宙開発の民営化という「国策」の一貫だ。国から支援を受けているし、そもそもスペースワン社の社長は元経産省の役人だ。だから打ち上げの3連続失敗でも記者会見で「失敗」という言葉は絶対に言わない。「今回を教訓にして次に向かって前進する」と言い続ける。「政策の無謬性」を貫くのが役人だから、失敗を認めるわけにはいかない。いま世界中で進んでいる激しい小型ロケット開発競争に遅れをとっている日本の危機的な状況を隠そうとしているように見える。


記事には書いていないが、いつも違和感を感じるのは発射場に集まる人たちだ。打ち上げの日には、花火大会の見物と同じ感覚で集まる見物客の姿が報道される。失敗しても「また次を楽しみにしよう」で終わり。

(写真:産経新聞より)

2026年5月3日日曜日

「こどもの日って何?」とAI に聞いてみたら


もうじき5月5日なので、「こどもの日って何?」とAI に聞いてみたら答えは・・・

「こどもの日とは、5月5日の祝日です。」「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝することを趣旨とした日本の祝日です。」「鯉のぼりを掲げ、人生の難関を突破して、立派に成長するようにとの願いを込めます。」・・・

AI は何でも知っている。参考になることを教えてもらい、すこし物知りになった気がする。


つねずね思っているAI の悪口をズバリ AI にぶつけてみた。「 AI って頭のいいおバカですか?」と聞くと。「 AI は人間が一生かかっても得られないほどの膨大なデータを学習しているので知識は超一流で『頭がいい』です。しかし言葉を『記号の並び』として処理しているだけで、内容を実感として理解していないから『おバカ』です。」・・・と的確な答えがかえってきた。


2026年5月2日土曜日

エレベータの階数表示

Intutive Design

エレベーターの階数表示は普通こうなっている。カゴは今 12 階にいて下へ向かっていると自然にわかる。


よく利用する商業施設のエレベータにこんなデザインがある。左に点灯している四角のマークはカゴの現在位置で、右に点灯している三角のマークはカゴの動いている方向を示している。あいだにある8という数字は固定で、この階を示している。この3つ以外はブラックアウトしていて何も表示がない。


これは一瞬ではわからない。カゴは今下の方にいて、上へ向かっているが、ここ8階へ来るのは最上階で折り返してからだから、まだ時間がかかるな・・・などと3つのマークをもとに頭の中で考えなければならない。

「情報のバリアフリー」がいわれる今、考えなくとも見ただけでわかる直感的デザイン(Intutive Design)が重要だが、それに逆行している。情報量をできるだけ少なくして、ブラックアウトすることが ”スッキリ” していて ”カッコいい” と勘違いしている。かつては家電製品でもそんなデザインが流行ったが、もう時代遅れだ。


2026年5月1日金曜日

映画「国民の創生」

 The Birth of a Nation

「国民の創生」は、今から100 年ほど前の映画だが、映画史上の歴代名作映画に必ずランキングされる。白黒サイレント映画だが、 D. W.グリフィス監督は「映画の父」と呼ばれている。

しかし同時にこの映画は黒人への人種差別を礼賛する内容で、「アメリカの恥」といわれるくらい批判されてきた。

「分断国家」といわれるアメリカだが、そのルーツをこの映画から知ることができる。そして今、トランプ大統領がそれをさらに加速させていて、それを多くのアメリカ人が支持していることの理由もこの映画から知ることができる。


映画は南北戦争から始まる。北軍と南軍が熾烈な殺し合いをして、北部と南部の憎しみの感情が高まる。戦争が終わると、リンカーン大統領は南北がひとつになることを優先しで、南部に対する融和政策をとる。しかしそれを生ぬるいとする急進派もいた。その一人にリンカーンは劇場で観劇中に暗殺される。


リンカーンの黒人優遇政策によって、黒人の社会的地位が上がり、選挙権も得る。南部の州議会では黒人政党が多数派を占めて権力を握り、黒人に有利な法律を作ったりする。街なかでは黒人が白人を襲ったりする暴力行為が日常的になり、白人は恐怖に怯えている。


ついに白人は黒人に対抗するために武装軍団を作る。これが今日まで続く「KKK」の始まりだった。三角の頭巾で顔を隠し、十字マークのついた白装束に身を固めている。。


 KKK は黒人をリンチで殺すなどして、暴力で黒人を制圧し、白人中心の社会を取り戻す。


最後に、黒人をやっつけてくれた KKK は英雄として迎えられる。映画のラストシーンで合成映像のキリストが現れる。キリストが KKK を救世主として祝福している。



KKK のおかげで社会秩序を回復し、北部と南部との対立が解消する。つまり、黒人を排除することによって、対立していた北部人と南部人が一つになり、「アメリカ人」という概念が生まれた。だから「国民」とはあくまで白人であり、黒人は「国民」に含まれていない。そういう歴史観に立っているこの映画だから、題名が「国民の創生」(The Birth of a Nation)になっている。

このラストシーンの映像は、先ごろ問題になったトランプ大統領の画像を思い出させる。キリストがトランプの肩に手を乗せている合成写真だ。外国移民の排除や、白人中心主義政策を推進するトランプが神に祝福されている。

アメリカはやがてマイノリティの人口が白人を追い越すだろうといわれる。その危機感から白人至上主義者が増えているといわれる。彼らは人種差別を正当化する。その代表が今でも続いている KKK で、トランプ政権を強力に支持している。彼らは今でも映画と同じように白頭巾をかぶり、南北戦争時代の南軍の旗を掲げている。まさに「分断国家」アメリカだ。


こちらで「国民の創生」全編が見れる。→https://www.youtube.com/watch?v=2Qcf7AvTuvM