2024年9月17日火曜日

日本企業の US スチール買収

  • Nippon Steel's Attempt to acquire U.S. Steel


日本製鉄の US スチール買収問題が大統領選の争点の一つになっている。USS の本拠地は、アメリカ最大の激戦州ペンシルバニアのピッツバーグにあるから、トランプは USS の労働者票を得ようと、買収に強硬に反対している。

現在の鉄鋼業の世界シェアを調べてみたら、1位が中国、2位がインド、3位が日本で、アメリカははるか下で 10 位にも入っていない。かつて工業大国アメリカを牽引していた世界一の鉄鋼メーカー USS 凋落の原因は、技術革新(イノベーション)の立ち遅れだという。

その USS が輝いていた 1960 年代に出した広報誌を今でも持っている。その題名が「INNOVATIONS」(イノベーション)だから、今見ると皮肉に感じる。内容は、鉄のイノーベーションによって産業と社会に変革をもたらし、明るい未来を作ることへの鉄の役割の大きさを強調している。一番下の写真に「USS : その大きな思いはイノベーションだ」とある。アメリカの産業力のすごさへの憧れのような気持ちでこの本を見ていた。(イラストレーションをシド・ミードが担当していたので、この本は大人気を博した。)


今までの鉄鋼産業は品質の競争で、シームレス鋼管などの日本独自の技術で優位に立ってきた。しかしこれからの鉄鋼業の最大課題は「CO2 削減」だという。それはコストダウンにもつながり、競争力を高めるから、世界中でそのイノベーション競争になっているという。そしてここでもUSS は遅れをとっているが、トランプは「気候変動など存在しない」といってUSS を外国企業から守ろうとしている。

中学生のとき学校で、地元の製鉄工場を見学したことがある。そのときのことは全て忘れたが一つだけはっきり覚えているのが、「煙突を見てください。煙が白いですね。出ているのは水蒸気だけfだけだからで、排出ガスから有害物質を取り除いてクリーンにしています。」と説明の人が言っていた。なぜかそれに妙に感心したのだが、今になって思うと、「CO2 削減」などという言葉さえなかった70 年も前からすでに日本の製鉄業は技術革新に取り組んでいたことがわかる。USS が日本企業に買収されようとしていることの素地はこんな昔から始まっていたことにいまさらながら気づく。


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