The Works of Toshiko Okanoue
「岡上淑子」(おかのうえとしこ)が日経新聞の美術欄(7 / 14)に紹介されていた。日本にこんなすごいシュール・リアリズム作家がいるとは知らなかった。さっそく作品集「はるかな旅」を手に入れた。
1950 年代のわずか7年間だけ「フォト・コラージュ」を制作して一瞬だけ注目を浴びたが、その後制作をやめたため忘れ去られていた。しかし近年になって、ある人が現住所を突きとめて、訪れてみるとびっくり、木箱の中に封印されていた未発表の作品 100 点以上を発見したという。「再発見」された岡本は、それ以降一躍脚光をあび、日本や欧米の美術館で回顧展が開かれる。そして現在も96 歳で存命だという。
岡上は終戦直後、洋裁学校に通っていた。進駐軍の時代だから、アメリカの写真雑誌「LIFE」などを普通に目にしていた。そこに載っている夢のように華やかな女性ファッションの写真に、洋裁をやっていた岡上は目を奪われる。そしてその写真を切り抜き、貼り付ける「フォト・コラージュ」の道へ入っていく。
フォト・コラージュは、シュール・リアリズムの「マックス・エルンスト」が有名だが、岡上はその影響を受けたという。この「沈黙の奇蹟」は、何頭もの犬を連れた顔のない女性がいて、後ろには箒のようなようなものを持ったやはり顔のない女性たちがいる。そこに上からパラシュートに吊り下げられた女性の顔が降りてくる。これから顔と体は合体するのだろう。
岡上の作品はすべて女性が主体になっているが、ほとんどで顔がなかったり、あるいは他の物に置き換わっている。そして多くの作品で、戦争や死に関係する何らかの物と組み合わせている。顔を吊り下げているこのパラシュートもそうだ。戦時中の女子高生の時に徴用で工場で働かされていた岡上は、戦争が終わって、何も無くなった焼け野原を見た時、これから女性は解放されるのだという夢と希望に満ちてきたと語っている。
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