「The Sea is Watching」
黒澤明は若い頃、画家を目指して本格的に絵画の修行をしていたから、映画監督になっても絵コンテを自分で描いていた。黒澤明の映画のショットが絵画的なのはそのためだ。
映画「海は見ていた」は、山本周五郎の小説が原作で、江戸の遊郭を舞台に、遊女たちの逞しくも哀しい生き様を描いている。黒澤明が自らシナリオと絵コンテを書いたが、撮影に掛かる前に亡くなってしまい、跡を熊井啓監督が引き継いで撮った。同名の「海は見ていた」という本にその作品のシナリオ全部と主な絵コンテが紹介されている。
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4人の遊女が雪を見ているシーン。黒澤のデッサン力の確かさがわかる。 |
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4人が並んで化粧している場面の面白い構図と、実際の映画のショット。 |
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嵐を不安そうに見ている二人。黒澤は窓を使って空間の奥行きを表現するのがうまい。 |
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屋根に登って水没した街を眺めているシーンと、実際の映画のショット。 |
普通の絵コンテは、カメラのアングルや動きなどを指示するもので、簡単な線画で描かれているが、黒澤の場合は色付きでしっかりと絵として描き込んでいる。セットのデザインや衣装や人物の表情まで含めて、場面の雰囲気全体を指示している。それが絵画的な黒澤映画のもとになっている。
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