2018年7月17日火曜日

めくるめく羅列の絵 ウンベルト・エーコの「芸術の蒐集」が面白い

" Vertigene Della Lista "  by Umberto Eco

「芸術の蒐集」という本がとても面白い。「めくるめく羅列」というのが原題で、様々な人や物で画面でびっしりと画面を埋め尽くす「羅列の絵」が集められている。著者のウンベルト・エーコ自身が「羅列愛好家」と呼ばれ、微に入り細にわたる知識の羅列をした小説(映画化もされたベストセラー「薔薇の名前」が有名)を書いた。絵画をこういう風に見る見方もあったかと感心する。

マルティン・マイテンス「ヨーゼフ2世との結婚のためのイサベッラ・ディ・パルマの到着」1760年

アンディ・ウォーホル「キャンベルのスープ缶」1962年

王様の結婚式を描いた 18 世紀の絵で、何千人もの参列者が延々と続いていて、その羅列が権力の強大さを誇示している。一方でキャンベルのスープ缶の全 32 種類を羅列したウォーホルの絵は消費文化と広告メディアが現代の権力者であることを示している。そう見ると時代のぜんぜん違う2つの絵に共通性が見てくる。エーコはこのように物事を「羅列」してその「リスト」を作ることで世界が見てくると言っている。そして本の最後で、「現在インターネット上でありとあらゆる情報が羅列されているが、ニセ物と本物を見分けることができず、かえって世界が見えなくなってしまった。」と言っている。

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