2014年8月4日月曜日

絵と写真の関係(3)

1970年頃から1990年頃までのアメリカで、このような絵がさかんに描かれた。写真そのままに精密な写実をする「フォトリアリズム」である。プロジェクターで写真をキャンバスに投影し、その画像を忠実になぞりながら描いていく。

アメリカでは、すでに19世紀から、写真を使って描くことは普通に行われていた。複数の写真を組み合わせて、現実に存在しない理想的な美しい風景を作りあげる「ピクチャレスク絵画」などがその典型。そのようなアメリカ絵画の伝統が受け継がれてきて生まれた現代版ピクチャレスク絵画がこの「フォトリアリズム絵画」ではないか。

ヨーロッパでは、絵とは自然のコピーをすることではなく、自分の内面の真実を描くべきものだとして、写真のように描くことに対して否定的だった。だがアメリカでは、「フォトリアリズム絵画」を、たんに写真を利用して精密に写実した絵と捉えるのではなく、写真やCGといった画像技術によって、人間の眼では見えなかった「写真的視覚」という現代的な新しい「ものの見方」が発見され、それを利用することで生まれた新しい概念の絵画である、という肯定的な評価がされていた。(「アメリカンリアリズムの系譜」より)


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