2024年8月6日火曜日

映画「インサイド・ヘッド 2」

「Inside Out 2」

公開されたばかりの「インサイド・ヘッド 2」を夏休み中の子供達にまじって見た。最大の関心は、第一作とどう変わったのか、変わらなかったのかだった。結果は、あれから9年たった今の時代を反映して、さらに ”進化” していた。もしこれを ”進化” というならば。


今回のライリーは、アイスホッケーが大好きな中1になっている。そして脳内の「司令部」も強化されていて、感情担当者が「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」に加えて「ムカムカ」「ビビリ」「シンパイ」などが加わっている。そして今回は、ストーリーのほとんどが司令部内で進み、ライリー自身はほんのわずかしか登場しない。

前回は、重要な分かれ道での決断だけを司令部が行なっていたが、今回は毎日の一挙一動すべてを司令部が指示している。例えば、新しくできた友達に「音楽は何が好き?」と聞かれて答えに困っているとき、司令部はありとあらゆるデータを駆使して、最適の答えをライリーに知らせる。司令部はまさに「生成 AI」の機能を持っている。 司令部はライリーを100%コントロールしていて、ライリーもこの「AI 司令部」に完全に頼っている。

司令部は認知科学を応用して、ライリーの記憶を、デジタル化したハイテク装置でコントロールしている。ライリーが寝ている時も、どんな夢を見せるべきかを司令部の「脳内ニューロンチーム」が夢の内容をせっせとデザインしている。

そして司令部内が分裂して「シンパイ」が主導権を握ると、ライリーの将来を心配して、「優しい人間」から「強い人間」に変身させようとする。ライリーはそれに従って、今までの親友を見捨ててまで、自分の成功へ向けて突き進むが、自分を見失っていく・・・

第一作の「インサイド・ヘッド 」について、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは著書「2 1 Lessons」で、以下のような鋭い指摘をしていた。この指摘は、今回の第2作でさらに確かなものになっている。

『ディズニーの無数の映画の中で、主人公は困難や危険に直面するが、最後には正真正銘の自己を見つけ、自分の自由な選択に従って勝利する。ところが「インサイド・ヘッド 」は、この神話を情け容赦なく打ち壊す。脳内へ入って見るとライリーは正真正銘の自己を持っておらず、自由な選択など一つもしていないことが判明する。実はライリーは生化学的メカニズムによって管理されているロボットなのだ。』

『真に驚くべきは、ディズニーがこれほど過激なメッセージを伝える映画を市場に出したことだけではなく、それが全世界でヒットしたことである。それはこの映画がハッピーエンドで終わるアドヴェンチャー映画であるため、ほとんどの観客が脳科学的な意味合いと、その不気味さに気づいていないからだろう。』


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