2024年8月30日金曜日

朝から晩まで一日中 スマホ をいじっている人たち

Animation「Are You Lost in the World Like Me ?」

朝から晩まで一日中 スマホ をいじっている人たちは今や当たり前になってしまった。そんな ”スマホ依存症” にかかった人たちを描いたショート・アニメ「Are You Lost in the World Like Me ?」が衝撃的だ。直訳すれば、「君も僕みたいにこの世界で迷子になっているの?」とでもなる。

新聞やテレビや雑誌や本や映画など、情報メディアがたくさんあるが、それらから多面的に情報を得ることで、偏った情報にとらわれることなく、総合的に物事を判断することができる。 しかし”スマホ依存症” は、すべての情報をスマホからしか得ず、しかもその情報は唯一無二で絶対だと思い込んでいる"病気"だ。彼らは "スマホの奴隷" になっている。

だから、フェイクニュースや、何か意図的な目的で流す偏った情報などにすぐ信じてしまう。そして騙されていることに自分でも気づいていない。その人たちで溢れている現代の狂った世界と、そのなれの果てをこのアニメは描いている。

Steve Cutts という人の作品で、作り話ではなく、毎日普通に見ている現実をそのまま描いているから、なおさら怖い。2分ほどの短編だが、ぜひ見てもらいたい。 →https://www.nylon.jp/blog/miri/?p=17401




2024年8月28日水曜日

メロドラマとしての「タイタニック」

 「TITANIC」

「メロドラマ」の定義としては、「女性映画や、家族の緊張感を描く映画、およびお涙頂戴ものを指す映画ジャンル」とか、もっと大雑把に「低俗な、あまり出来の良くない、センチメンタルなドラマ」といわれることが多い。

しかしメロドラマについてのもっと深い研究がされている。「メロドラマとハリウッド映画」(福田京一)では「メロドラマ」とは、「悪人の犠牲になる弱い善人(ヒロイン=通常は純真な女性)が、紆余曲折を経て正義のヒーローに助けられ、両者がめでたく結婚する、という筋立てをもつ。とりわけ悪人の登場は、モラルと社会秩序の意義を教えるためにメロドラマには欠かせない。」

その典型例として「タイタニック」をあげている。この映画は、「女性映画」「恋愛映画」「ヒーロー映画」「デイザスター映画」などの要素を含みながら、物語の基本は、悪人(キャル)に苦しめられているヒロイン(ローズ)を、ヒーロー(ジャック)が助けるという「古典的メロドラマ」のプロットを土台にしている。

写真上:1等船室の上流階級の人たちとの晩餐会でのローズ
写真下:3等船室の貧しい人たちに混じってダンスをするローズ

「タイタニック」が沈没した 20 世紀初頭のイギリスは、女性が家父長制に縛られ、苦しめられていた歴史を背景にしている。没落した貴族であるローズの母親は娘の幸福を考えるよりも、娘を金持ちの実業家キャルに差し出して、上流階級に留まろうとする。一方でローズの婚約者であるキャルは、名誉欲と虚栄心が強く、女性を飾り物としか見ていない。この状況を女性の運命として受け入れていたローズが、それを拒否するようになる。そのきっかけが、あらゆる束縛を嫌い、自由であることを何より大切にする、無垢な心を持つ青年ジャックとの出会いだった。

「タイタニック」のような「古典的メロドラマ」では、ヒーローやヒロインの美徳は超越的、絶対的な価値であり、悪は必ず負けることになっている。しかし近年のメロドラマは、ハリウッド映画のさまざまな映画ジャンルと結びついている。それはアメリカの政治・文化と強い関係を持っていて、階級、民族、人種、ジェンダー、などについての善悪が対立する物語に置き換えられる。それらは善悪二元論的な世界観が強調されがちになる傾向がある。

福田氏によればさらに、映画に限らず SNS などのネットメディアでも、それぞれの政治的・文化的分脈の中で、善と悪を過激に、感情的に、扇情的に描き、批判し、報道し、論評したりする。このような独善的な正義感は、メロドラマ的な世界観の極端な形であり、そのことに我々は注意を払う必要がある、としている。


2024年8月26日月曜日

渡辺貞夫の「オレンジ・エクスプレス」

 「Orange Express」

カリフォルニアのさわやかな風を浴びながらドライブしている・・・気分で猛暑の夏を過ごす



2024年8月23日金曜日

「見せかけ」の街パリと、映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」

「Mrs. Harris Goes to Paris」 

パリ・オリンピックで、セーヌ川で水泳競技が行われたが、汚染された水で感染症になった選手が続出した。セーヌ川で行った派手な演出の開会式だが、パリの美しさは「見せかけ」だけで、実態は汚い街だということがバレてしまった。

パリでの実際の体験でもそうだった。ちょっと裏通りへ入ると、犬の糞だらけで、避けて歩くのに苦労する。ハイヒールが生まれたのはパリだが、理由は犬の糞のためだという有名な話に納得がいく。シャンゼリゼの美しさは「見せかけ」だ。

たまたま昨日、NETFLIX で「ミセス・ハリス、パリへ行く」という映画を見ていたら、「見せかけ」のパリを扱っていて面白かった。イギリス人の未亡人の中年女性がクリスチャン・ディオールのドレスに憧れて、パリへ行き、いきなりシャンゼリゼのディオール本店に飛び込んで騒動が起きる・・・というドタバタのコメディだ。

主人公がパリの街を歩くシーンがたびたび出てくるが、いつも道路がゴミだらけなことが強調される。そして失業者があふれていて、表向きの華やかさと対比される。ディオールの会社自体も赤字経営で苦しく、社員をクビにしたりしている。このように川や道路だけでなく、パリという街全体が「見せかけ」であることが暴露されている。


2024年8月20日火曜日

靖国神社の遊就館

 War Museum  YUSYUKAN

終戦の季節8月には靖国神社へ行ってみる価値がある。参拝のためではなく、付属の軍事博物館「遊就館」見学のために。


「零戦」や「回天」などの特攻兵器が多数展示されていて、戦争の「リアル」を実感できる。「回天」はいわゆる人間魚雷で、巨大な潜水艇全体が爆弾の塊だが、その隙間に乗った乗組員1人が操縦する。だが、脱出装置はないので、乗ったら最後、攻撃の成否にかかわらず、必ず死ぬ。

戦死した兵士たちの遺品や、家族にあてた手紙なども展示されている。ただしこれらはあくまでも、「お国のために戦って散った兵士たち」という美化の立場での展示であり、「戦争の犠牲になって死んだ兵士たち」という立場ではない。靖国神社だから当然だが。

アメリカ人の団体観光客が驚くほどたくさん来ている。館のガイドが説明しているが、アメリカの兵士も特攻兵器でたくさん殺されているのだから、それをどう説明しているのか、興味があった。しかしそばで立ち聞きしようとしたら、すぐに追い出されてしまった。ということは・・・


2024年8月18日日曜日

「Breezin'」

 1980 年代の懐かしいフュージョンの CD を購入。暑い夏をさわやかな気分で過ごせる。ビールでも飲みながら・・ 「Breezin'」のタイトル同様、ジャケットのデザインも夏向きで、このイラストレーター(名前は忘れた)は、一世を風靡した。 



2024年8月16日金曜日

日本の観光業がダメなわけ

 

国税庁が発表した従業員の給与が最も低い業界は「宿泊業・飲食サービス業」だった。円安の影響で外国人観光客が増えて見かけは潤っているように見えるが、実態は相変わらず、この業界の生産性の低いことを表している。

日本の観光業界の振興策を政府に提言しているイギリス人の経済アナリストのデービッド・アトキンソン氏は、以下のように指摘している。

観光業が成り立つ国の条件として「自然」「気候」「文化」「食」の4つだが、このすべてを満たしている日本は世界でもまれな国だという。それにもかかわらず、日本はその潜在能力を活かしていないと指摘している。各国の観光ビジネスの GDP に占める割合は、世界平均が 1.61% だが、日本はわずか 0.41% という。日本の観光業は世界平均の4分の1しか稼いでいないことになる。

同氏はその原因を挙げているが、それは観光業界自身の怠慢によるという。小さな例では、日本のホテルや旅館はチェックインが3時以降で、チェックアウトは 10 時までと決まっているが、こんなのは日本だけだという。そういえば思い出すのは、ホテルや旅館の食事が日本中どこへ行っても同じで画一的なことだ。品数の多さを競って、土地の名物を提供しようなどという発想は全くない。

そのような観光客の多様なニーズに応えようとしないことが、観光業の生産性の低さの原因になっているという。魅力的な観光地になる可能性を持っている場所を新たな観光資源として開拓しようとしない業界の思考停止にあるという。個人的経験としても例えば、北海道は夏より冬の方が断然魅力的だと思うが、「るるぶ」のような旅行会社のガイドブックに、冬の情報はない。だから北海道という素晴らしい観光資源は半年間眠っていることになる。


2024年8月13日火曜日

オリンピックの国別メダル獲得数と国力の関係

 Olympic Medal

今回のパリオリンピックで日本は、米中に続いて世界3位のメダル数を獲得した。各国のメダル獲得数と政治・経済との関係を分析した研究がある。ここでは京都産業大学の鈴木清巳教授の分析を紹介する。「人口」「GDP」「政治体制」の3つを指標にして各国を比較している。なお前回の東京オリンピックでのデータ(下図)に基づいている。


この表のメダル獲得数上位 20 か国だけで、総メダル数の7割以上を獲得しているが、それらの国は、以下の三つの類型に分けられる。

① GDP の規模が大きな先進資本主義国。アメリカ、イギリス、日本などの G7 各国はすべて 10 位以内に入っている。 

② 国家の資源を集中的に選手の動員・強化に投下できる権威主義国家。中国がその代表だが、メダルの絶対数ではアメリカに次いで2位でも、人口比のメダル獲得数は、20 か国中の最下位だ。要するに人口の多さでメダル数を稼いでいる。また中国は最も人権が制限されいる(表の一番右の欄)専制国家の利を生かして、選手を動員し強化できる。また中国の人口1人あたりの GDP 比でいうと、メダル数は①の国に比べて4分の1程度しかない。つまりスポーツが国民のためよりも国威発揚のためのものであることがわかる。 

③ 中小規模国であってもスポーツ育成を国策として注力している豊かな国。オーストラリア、オランダ、がそれで、人口比メダル数では20 か国中ダントツのトップだ。

2024年8月10日土曜日

ウクライナ映画「バトルフィールド クルーティの戦い」

 「KRUTY 1918」

ウクライナ映画の「バトルフィールド  クルーティの戦い」は、100 年前の 1918 年に、ロシアがウクライナに侵攻した史実をもとにしている。これを見ると、現在のウクライナ戦争がなかなか終わらないことの歴史的背景がよく理解できる。


ロシア軍が侵攻し、首都キーウに迫ってくる。ウクライナは必死の防戦をするが劣勢だ。銃を持ったこともない大学生の志願兵 400 人が集められ、4000 人のロシア軍と戦う。若者たちは勇敢に戦うが、激戦の末に敗れて捕虜になり、壁の前に並ばされて銃殺される。彼らはウクライナ国歌を歌いながら死ぬ。


この映画は 2019 年の制作だが、その5年前の 2014 年に、プーチンは、クリミア半島やドンバス地方に侵攻し、一方的に併合してしまう。この映画には、ウクライナの人たちの、ロシアへの怒りが込められている。だから若者たちの銃殺を命じる冷酷な司令官の顔がプーチンとそっくりなのは、偶然ではなく、意図的なものだろう。

そもそもロシアの歴史は、外国への侵攻の歴史だった。この映画でわかるように、今のウクライナの戦争も、プーチンからすれば、100 年前に始まった戦争の「続き」を今もやっているにすぎないのだろう。


2024年8月8日木曜日

江戸の居酒屋

 Izakaya in Edo period

生ビールでもちょっと一杯の季節に、昔の飲みを紹介。(再掲)

江戸では居酒屋が大繁盛していたようで、「居酒屋の誕生」(飯野亮一著)という本に、その様子が紹介されている。大阪の「食い倒れ」に対して、江戸の「呑み倒れ」と言われるくらい、江戸っ子は酒が好きで、居酒屋の数も、人口比でいうと現在の東京と同じくらい多かったという。


「酒」という大きな看板があり、左には「大極上中級にごり酒」と、酒の等級を示す看板が立てある。障子に「お吸い物」と書いてあるが、これは今と意味が違って、酒のツマミのことだという。店頭はほとんど魚屋のようで、魚がたくさん並んでいる。中央に見える調理台で店員が魚をさばいていて、左端のかまどで煮物などの調理をしている。奥の小上がりで客が飲んでいる。


酒は夏でも冬でも必ず燗で飲んでいた。中央にいる客が持っている筒形の器は「チロリ」という銅製の徳利のようなもので、これで燗して提供された。奥のかまどで店員が料理をしている。二人の客が入ってこようとしているが、現在定番の「縄のれん」は無い。それが生まれるのは江戸時代末期からだという。なお「お通し」は昭和になってからの新しい慣習で、江戸時代にはなかったそうだ。

客席は小さい間仕切りで仕切られている。男の二人づれは、刺身をつまんでいるが、酒の肴には刺身が最もポピュラーだったそうで、特に安い魚だったマグロは人気だったという。また右下の店員が鍋を運んでいるが、鍋物も定番メニューで、いろいろな種類の鍋料理が提供された。また居酒屋の客層はかなり広く、手前では二人の女性が女子会をやっていて、奥では "お一人様" の女性客が手酌で呑んでいる。また 2 4 時間営業の店も多く、みんな普通に朝から呑んでいたという。

2024年8月6日火曜日

映画「インサイド・ヘッド 2」

「Inside Out 2」

公開されたばかりの「インサイド・ヘッド 2」を夏休み中の子供達にまじって見た。最大の関心は、第一作とどう変わったのか、変わらなかったのかだった。結果は、あれから9年たった今の時代を反映して、さらに ”進化” していた。もしこれを ”進化” というならば。


今回のライリーは、アイスホッケーが大好きな中1になっている。そして脳内の「司令部」も強化されていて、感情担当者が「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」に加えて「ムカムカ」「ビビリ」「シンパイ」などが加わっている。そして今回は、ストーリーのほとんどが司令部内で進み、ライリー自身はほんのわずかしか登場しない。

前回は、重要な分かれ道での決断だけを司令部が行なっていたが、今回は毎日の一挙一動すべてを司令部が指示している。例えば、新しくできた友達に「音楽は何が好き?」と聞かれて答えに困っているとき、司令部はありとあらゆるデータを駆使して、最適の答えをライリーに知らせる。司令部はまさに「生成 AI」の機能を持っている。 司令部はライリーを100%コントロールしていて、ライリーもこの「AI 司令部」に完全に頼っている。

司令部は認知科学を応用して、ライリーの記憶を、デジタル化したハイテク装置でコントロールしている。ライリーが寝ている時も、どんな夢を見せるべきかを司令部の「脳内ニューロンチーム」が夢の内容をせっせとデザインしている。

そして司令部内が分裂して「シンパイ」が主導権を握ると、ライリーの将来を心配して、「優しい人間」から「強い人間」に変身させようとする。ライリーはそれに従って、今までの親友を見捨ててまで、自分の成功へ向けて突き進むが、自分を見失っていく・・・

第一作の「インサイド・ヘッド 」について、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは著書「2 1 Lessons」で、以下のような鋭い指摘をしていた。この指摘は、今回の第2作でさらに確かなものになっている。

『ディズニーの無数の映画の中で、主人公は困難や危険に直面するが、最後には正真正銘の自己を見つけ、自分の自由な選択に従って勝利する。ところが「インサイド・ヘッド 」は、この神話を情け容赦なく打ち壊す。脳内へ入って見るとライリーは正真正銘の自己を持っておらず、自由な選択など一つもしていないことが判明する。実はライリーは生化学的メカニズムによって管理されているロボットなのだ。』

『真に驚くべきは、ディズニーがこれほど過激なメッセージを伝える映画を市場に出したことだけではなく、それが全世界でヒットしたことである。それはこの映画がハッピーエンドで終わるアドヴェンチャー映画であるため、ほとんどの観客が脳科学的な意味合いと、その不気味さに気づいていないからだろう。』


2024年8月4日日曜日

映画「硫黄島からの手紙」と、 92 年前の金メダリスト

「Letters from IWOJIMA」

パリ・オリンピックの馬術競技で日本がメダルを取ったが、92 年ぶりだと報じていた。92 年前の 1932 年のロサンジェルス大会の馬術競技で、陸軍中尉の西竹一が金メダルに輝いた。名家の生まれで男爵だった彼は「バロン西」と呼ばれ、アメリカでも人気があった。その西が登場した映画が、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」(2006 年)だった。

この映画は、第二次世界大戦末期の硫黄島での激戦を題材にした戦争映画だが、アメリカ映画でありながら、日本軍側の兵士や将校の一人一人の人間像を描いている。その中に金メダリストの西も登場する。

西は中佐として硫黄島へ赴任する。肉弾戦をやっている戦場に愛馬を連れて悠然とやってくる。実際に西はおおらかな人間だったそうだ。印象的だったのは、捕虜になった米兵を尋問するシーンだった。故郷を聞いてカリフォルニア出身だと知ると、米兵とオリンピックの思い出話しに花を咲かせる。

2024年8月2日金曜日

台湾のマンション

Apartment in Taiwan 

台湾のマンションは面白い。岩山のような "ギザギザ感” がすごい。各戸がそれぞれに、窓に ”出っ張り” を追加して出窓風にしている。室内空間を広げるのが目的だろうか(?)よくわからない。そこをガラス張りにしたり、防犯用(?)に格子をつけたりしている。デザインがバラバラだから、この ”ギザギザ感” が生まれる。