「Landscape in the Mist」
12 歳の女の子と5歳の弟が家出をして旅をするロードムービー だが、よくある「心温まる」話しではない。父親がドイツにいる(本当かどうかわからない)と聞いて、二人で列車に乗って会いにいく。無賃乗車だからすぐに降ろされてしまい、あとはひたすら歩く・・・
テオ・アンゲロプロス監督は、この自作について、「これはおとぎ話しの映画だ。」と語っている。「おとぎ話し」とは「比喩的に語る、現実ばなれした空想的な話」の意味だ。だから映画は、ストーリーと直接関係のない、比喩的または象徴的なシーンがたくさん出てくる。
例えばこのシーン。ふたりが海を見ていると、突然、彫像の手が浮かんでくる。それをヘリコプターが釣り上げて回収している。ストーリーと関係のない、「おとぎ話し」的場面だ。
テオ・アンゲロプロス監督はほとんどの作品で、ギリシャの現代史を下敷きにしている。つねに他国から侵略されてきたギリシャの哀しい歴史だ。この場面も戦争中に、侵攻されたイタリアの独裁者の彫像の一部だ。登場人物たちの不幸をギリシャの歴史に重ねている。
その「不幸」なシーン。駅のホームで汽車を待っている男に声をかける。相手の目を見ながらきっぱりと「切符を買うお金を下さい。」と言う。女の子は「覚悟」を決めている。
ラストで二人は国境を越えてドイツに入る。すると丘の上に一本の木が立っている。それはやっと願いが叶う「希望」のシンボルのように二人には見える。しかしそれは霧にかすんでいて、あいまいだ。「希望」はやがて「絶望」になることを示唆して映画は終わる。
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