2019年10月7日月曜日

静物画を活き活きさせる透過光    サブサーフェス・スキャタリング

Subsurface Scattering

静物画で果物を描くとき、「ぶどう」と「オレンジ」をよく描く。この二つは他の果物と違って果肉が半透明なため、透過光が生じる。その光を描いて「ぶどうらしさ」や「オレンジらしさ」を表現するのが面白い。


果肉を透過した光が、影の中でぼーっと光る。左の失敗作のように表面の光しか描かないと、さくらんぼのように見えてしまう。右のように透過光を描くと(誇張しているが)ぶどうらしくなる。

オレンジを逆光にすると光をよく通す。肉厚の薄い部分ほど明るくなりグラデーションができる。右側の絵は逆光ではないが、それでも影で暗くなるはずの右の側面が透過光で明るくなっている。

液体の場合は、果物よりもっとはっきり透過光が見える。ワインが手前からの光で明るいのと同時に、反対側にも後ろからの反射光の透過が見える。これを描くとワインの透明感が表現できる。


見えている「表面」だけではなく、透明なものは、後ろにもう一つの「表面」があり、そこから入る光を意識しなさいということで、絵画の用語で「サブサーフェス・スキャタリング」という言葉がある。「サブサーフェス」は光が入ってくる後ろ側の表面を指し、「スキャタリング」はサブサーフェスから入った光が拡散しながら透過して出てくることを指す。これは人間にもあり「耳たぶ」を透過する光を描いた人物画を見ることがある。

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