2019年10月25日金曜日

グリッド法による下絵の拡大と転写


先日展覧会で、先輩の画家の水彩画を見たら、うっすらとグリッドが見えたので、ご本人に「見えましたよ」と言ったら「バレたか」と笑っていた。エスキースや習作などの下絵を本番で拡大するのに、自分も含めてほとんどの人が「グリッド法」でやっているから、「バレる」というほどのことではないが、この話で盛り上がった。昔の技法書には、スライドプロジェクターを使う方法が載っていたが今時そんなことをやる人はいない。松本竣介はトレペに本番と同じ大きさの下絵を描いて、それをカーボン紙で転写するやり方をしていたが、これは大きいサイズの絵では無理だ。やはりグリッド法がいちばんいい。

グリッド法は、ルネッサンスの頃からすでに一般的な方法だったようで、当時のデッサンにグリッドが描かれているものが残っている。右は16 世紀のラファエロの習作だが、拡大用グリッドの線がはっきり見えている。(写真;「ドローイングレッスン」より)

ミケランジェロの伝記映画「華麗なる激情」で、大聖堂の壁画を描くシーンがある。グリッド法で拡大した線画を壁に転写するやり方が詳しく描かれていて、なるほどそうやっていたのかと感心した。

(左)ミケランジェロの下絵を大きい紙に拡大し、線に沿って弟子がキリで穴を開ける
(右)紙を壁にあてがい、穴の上から墨を擦り込む

(左)白い漆喰の上に点線で転写される
(右)点線をつないで線にしていき、線図を完成させる

最後にミケランジェロ本人(チャールトン・ヘストン)が着色する。フレスコ画は漆喰が生乾きのうちに描かなければならないので、一回に描く人物は一人だけで、これを繰り返して群像にしていく。

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