2018年11月2日金曜日

フェルメールの市松模様の床

Vermeer's perspective

フェルメールの絵は徹底的に分析されていて、解説本も多いが、不思議と書かれていないことがある。前にもちょっと触れたことがあるがもう一度。

フェルメールの絵の遠近法は完璧に正しいが、彼の絵に多く描かれている市松模様のタイルの床についてはやっかいな問題がある。

図は床全面を正方形のグリッドで埋め尽くした場合の透視図で、円は視界の範囲を示している。図の中央近くの四角は正方形に見えているが、円の周辺に近いところは歪んでいて正方形に見えない。(図は「Perspective,   a new system for designers by Jay Doblin」より)


フェルメールの絵も初めは床のタイルが右下部分で歪んでいた。遠近法としては正しくても視覚的には不自然なこの歪みにフェルメールは対策をとる。① ② ③ は描かれた順番通りだが、改良していった様子がわかる。最初の①では画面右下のタイルは歪みのままになっている。次の②では右下を人物の影で暗くして目立たなくしている。さらに③では、テーブルクロスを床まで垂らして右下のタイルを完全に隠している。そしてこれ以降フェルメールの絵は全て縦長になるが、それもこの問題への対処だったのかもしれない。

  ①                               ②                         ③

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