2018年4月5日木曜日

北斎の構図と遠近法

Perspective of Hokusai

また北斎の続き。
北斎は「三ツ割法」という独自の画面構成の手法を考え出し、その説明図を示している。この図の第1のポイントは構図で、地平線を画面下3分の1に置くこと。第2のポイントは遠近法で、地平線上に2つの消失点  (!) を置くこと。


第1のポイントについて、「神奈川沖浪裏」でも地平線は下3分の1に置かれている。そのため波は見上げる空の中にあり、大きさと迫力を出している。それに対して、若い頃の作品ではまだ地平線が上の方にあるため、波を見下ろす視点になっていて、両者の迫力の差がよく分かる。地平線を下げて空を大きくとる構図は当時のオランダ風景画の定番で、広大な空間を表現できた。西洋絵画を勉強していた北斎はそれを応用したのだろう。


「三ツ割法」のもうひとつのポイントの、一点透視で消失点が二つというのは今の常識からいうととんでもないこと。左の絵がその北斎理論通りの例で、左右の家並みの消失点が別々になっている。これについて研究者は「西洋絵画の知識から、北斎らの絵に線遠近法の図法が見られるが、図法として厳密ではなく、構図の必要性があれば、躊躇なく線遠近法を無視した自由な展開が加味されている。だから一点透視の消失点が一点に収束していない例が多い。」といっている。しかし面白いことに前出の右の絵では一点に収束している。これはオランダ商館からの依頼の作品だから世界の常識に従ったのだろうか。


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