前回投稿の「イントゥ • ザ • ウッズ」で、怖い場所としての「黒い森」について書きました。絵画の世界でも「黒い森」は永いあいだ描かれてきたのですが、それらのなかにグリム童話やディズニー映画のイメージの源を見ることができます。 (参考文献:マルセル • ブリヨン「幻想芸術」)
アルブレヒト • アルトドルファー
「森の中の聖ジョルジュ」1510年
樹々が猛り狂ったように激しく繁茂していて、空をさえぎり、画面全体を覆いつくしています。森のすきまの眺望は後世の加筆で、元は洞窟の入り口があり、騎士がそこに棲む竜を退治しに入っていこうとしている絵だということです。。
カスパー • ダビッド • フリードリッヒ
「森の中の猟兵」1814年
森の中へ逃げこもうとしている敗軍の兵士が、威圧するような重苦しい樹々のかたまりを絶望的に眺めています。森という強大な自然の力を眼前にした無力な人間の恐怖をシンボライズしています。
ロドルフ • ブレダン
「善きサマリア人」1860年
森の中に棲息する食肉植物が残酷な毒液で人間に襲いかかり、すでに人と馬の首は溶けているという恐ろしい絵です。ブレダンは、森の中でうごめく異形の生命がひき起こす、不安や嫌悪や恐怖を描いた人です。
「死の島」1886年
ねじれた糸杉の森と岩で覆われた謎めいた島、その墓所へ棺をのせた小舟が入っていく。この幻想の森は神の象徴であり、死者が還っていく場所です。
マックス • エルンスト
「陰鬱な森と鳥」1927年
20世紀に森を主題に描いたのがエルンストです。木々は黒こげに焼かれて石化した岩の塊のようです。得体の知れない不気味な森ですが、高層ビルの密集する現代都市のように見えます。逆さまに落下している鳥が時代の不安感を表しています。
これらの絵を見ると、森が単なる風景としてではなく、伝説 • 戦争 • 宗教 • 文明などとの関わりの中で描かれていることが分かります。「黒い森のグリム」で、森がヨーロッパの精神文化の根っこのひとつになっているという指摘がうなずけます。
これらの絵を見ると、森が単なる風景としてではなく、伝説 • 戦争 • 宗教 • 文明などとの関わりの中で描かれていることが分かります。「黒い森のグリム」で、森がヨーロッパの精神文化の根っこのひとつになっているという指摘がうなずけます。
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